タマネギの球の形成肥大および休眠に関する生理学的研究 (第5報) : 球の形成肥大と炭水化物, チッ素および Auxin 代謝との関係
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概要
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タマネギの球の形成肥大の生理機構を明らかにする目的で, 本報告は炭水化物, チッ素代謝および Auxin 代謝の面から調査した。得られた結果は次のとおりであつた。1. タマネギの球の形成肥大過程に従つて炭水化物, チッ素代謝をみると, 葉身の伸長による草丈の増加期にはチッ素が葉身に多く含まれ, 球の肥大期に入ると減少し始めている。一方炭水化物は葉鞘に蓄積され, しだいに濃度が高まり, 球の肥大初期に最高に達し, 以後球の肥大とともに減少している。チッ素の追肥は葉身内チッ素を高め, 同化機能を高め球の肥大を促進しているが, しや光の場合葉身内チッ素含量も少なく, 同化機能も弱いので同化量も少なく, 球への糖の蓄積が少ない。2. 長日条件は体内炭水化物含量を高め, チッ素含量を低下せしめるのに対し, 短日条件は炭水化物含量を減じ, チッ素化合物を高かめた。3. 長日および短日条件下でタマネギの葉内にしよ糖を注射器をもつて外部より補給すると, 長日条件下では球の形成は促進されないが, しよ糖濃度に応じて肥大が顕著に促進された。逆に短日条件下では与えられたしよ糖液は栄養生長に消費され, 旺盛な生育を示し, 球を形成しなかつた。4. タマネギの葉身部および頂芽部の Auxin は草丈の増加速度と密接に関係して消長していた。すなわち, 長日処理後10日目では草丈の急激な増加と多量の Auxin がみいだされ, 処理後30日目になると長日区ではすでに草丈は最大に達し, Auxin は短日区より少なくなつていた。さらに50日目になると長日区の Auxin は30日目のそれより減少し, 短日区との間に著しい差異がみられるようになつた。5. 早生の愛知白と中生の泉州黄との葉身内 Auxinlevel をみると長日処理後の草丈の増加度合に応じて変化し, 10日目では愛知白の方が泉州黄より高く, 30日目では逆になつていた。6. Auxin を外部から補給して球の形成肥大との関係を調査した結果は, 短日下では与えられた Auxin 濃度に応じて生育が抑制されているばかりでなく, 球の形成がみられず, 長日条件下では Auxin 濃度にかかわらず球を形成していることを示していた。そして Auxin 濃度が高まるにつれて球の形成が少しずつおくれていた。球の肥大に対し Auxin は関係ないように考えられた。
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