タマネギの球の形成肥大および休眠に関する生理学的研究 (第9報) : 球の汁液の性質と休眠との関係について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
タマネギ球の休眠機構を明らかにするために球の休眠部位の検索, それによる球内の生理状態の追求を種子の休眠機構解明に取り扱われている方法によつて研究した。1. テトラゾリウム反応によつて休眠している球と芽球とを比較対照して, 休眠球では生長点部を含む底盤部のみが強い呈色を示して, 生長しうる状態にあるが, 他の部位が呈色しないで活動休止状態にあつて生長に必要な物質を供給しえないか, 生長を阻害する物質を生産して供給しているように思われた。2. 球の汁液 (タマネギ汁液と呼ぶ) はタマネギおよびダイコンの種子発芽を著しく抑制するばかりでなく, タマネギ苗の生長をも著しく抑制する。3. 種子の発芽は置床初期からタマネギ汁液が与えられたとき著しく抑制されるが, 吸水後タマネギ汁液が与えられたときは前よりも抑制されなかつた。しかしなお相当発芽が抑えられている。4. タマネギ汁液中に20時間浸積された種子を流水で洗い, かげ干して後新たに水で発芽せしめたところ, 汁液中で発芽せしめた場合より著しく発芽数が増加していたが, 水に浸積し, かげ干した種子にくらべればなお発芽が抑制されていた。5. タマネギ汁液の発芽抑制力は熱に安定で, 熱処理前後で汁液の抑制力は変りなかつた。6. 汁液の発芽抑制力は球の貯蔵によつてしだいに低下しているが, 酸素供給を制限するような貯蔵方法では球の汁液の発芽抑制力の低下傾向は著しくなかつた。また萠芽のおそい奥州種の汁液の発芽抑制力は, 萠芽の早い泉州黄種より強い傾向がみられた。7. 休眠球と萠芽球との各部から汁液を作り, それぞれの発芽におよぼす作用をみると, 休眠球では肥厚葉でも鱗葉でもそれらの汁液は著しく発芽抑制力があるが, 萠芽球では各部とも著しく発芽抑制力が低下しており, とくに外側の肥厚葉での低下が大きい。これら各部のpHはほとんど変つていないので, pHが関係しているようには考えられなかつた。8. タマネギ汁液が種子の発芽および苗の生長を抑制する力をもつていることと, この汁液の発芽抑制力の消長が球の休眠と密接に関係していることから, この汁液の性質によつて球の休眠が左右されていることが暗示された。また汁液には物理的要因による発芽抑制作用と化学的要因としての発芽抑制物質があることが示された。
著者
関連論文
- ナスの収量並びに木部溢泌液中の無機成分及びホルモンレベルに及ぼす台木の影響
- キャベツの結球現象に関する生理学的研究 : (第1報) 摘葉の結球体勢に及ぼす影響
- マレイン酸ヒドラジツド処理タマネギ球の芽遅延ならびに機能障害発生機構に関する研究
- タマネギの球の形成肥大および休眠に関する生理学的研究 (第11報) : 球の汁液中の物理的要因について
- タマネギの球の形成肥大および休眠に関する生理学的研究 (第8報) : 休眠期間中の球内成分の消長について
- タマネギの球の形成肥大および休眠に関する生理学的研究 (第10報) : 球の汁液中の発芽抑制物質について
- タマネギの球の形成bull;肥大および休眠に関する生理学的研究 (第4報) : 葉および根の役割について
- タマネギの球の形成肥大および休眠に関する生理学的研究 (第6報) : 球の形成肥大と Gibberellin および核酸代謝との関係
- タマネギの球の形成肥大および休眠に関する生理学的研究 (第3報) : 球の形成肥大に及ぼす環境要因の影響
- レタスのとう立ちに関する生理学的研究 (第2報) : 茎の伸長とホルモン代謝との関係
- レタスのとう立ちに関する生理学的研究 (第1報) : 花芽形成と体内成分との関係
- ハナヤサイの花蕾の分化発育について(第1報) : 花蕾の分化発育に関する生態学的研究
- タマネギの球の形成肥大および休眠に関する生理学的研究 (第1報) : 球の形成肥大の様相
- キャベツの結球現象に関する生理学的研究 : (第2報)断根の結球体勢に及ぼす影響
- キャベツの結球現象に関する生理学的研究 (第3報) : 結球体勢に果たす頂芽の役割
- ピーマンの生育, 果実発育と収量に及ぼす仕立本数, 育苗日数と栽植密度の影響
- タマネギの球の形成肥大および休眠に関する生理学的研究 (第5報) : 球の形成肥大と炭水化物, チッ素および Auxin 代謝との関係
- タマネギの球の形成肥大および休眠に関する生理学的研究(第2報) : 球の形成肥大に関する組織学的観察
- タマネギの球の形成肥大および休眠に関する生理学的研究 (第7報) : 休眠過程に及ぼす環境要因および化学薬品の影響
- タマネギの球の形成肥大および休眠に関する生理学的研究 (第9報) : 球の汁液の性質と休眠との関係について
- ピーマンの結実•肥大に関する研究 (第1報) : 着果習性について