タマネギの球の形成肥大および休眠に関する生理学的研究 (第10報) : 球の汁液中の発芽抑制物質について
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概要
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タマネギ汁液中の発芽抑制物質の本体を明らかにし, さらにこれの作用機作を検討するために実験を行ない, つぎの結果がえられた。1. タマネギ汁液中のエーテル可溶物には種子の発芽を抑制する発芽抑制物質のあることがみとめられた。2. このエーテル可溶物は遅萠芽性の奥州種に少なく, 早萠芽性の泉州黄に多いことがみとめられ, 発芽抑制物質が球の休眠と関係している主要因とは考えられない結果を示した。3. インフロピルアルコール•アンモニア•水で展開し, 10等分してから蒸溜水でそれぞれの部分を溶出せしめ, それらの液についてダイコン, タマネギ種子の発芽におよぼす影響を調査した結果は, Rf0.8〜1.0の間に発芽抑制物質が存在することを示した。この部分は明らかに芽球のものよりも休眠球のものに著しい抑制力のあるごとを暗示した。4. Rf0.8〜1.0の部分はタマネギ臭があること, この部分の吸光度が Allylsulfide と一致していることおよび市販の Allylsulfide もこの位置に分布し, タマネギのものとRfが一致することからRf0.8〜1.0の部分はAllylsulfide であると考えられた。5. Allylsulfide の球内の分布をみると, 肥大中はごくわずかであるが球の肥大完了とともに集積し, 外部肥厚葉およびくびの部分に多く集積していた。6. Allylsulfide をエーテル抽出物からえて発芽抑制機構を調査したところ, エーテル抽出物による発芽抑制がシスティンによつてかなり回復されたので, SH酵素を Allylsulfide が不活性にして発芽を阻害するものであろうと考えられた。
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