安藤昌益の死生観 : 道元禅師との比較
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概要
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本論の目的は、本覚思想の批判と克服の思想との視点から、昌益と道元禅師の死生観における客観性と主体性の問題について比較検討することである。昌益と道元禅師はともに、私欲に基づいた生き方を批判した。昌益は、社会と精神世界の上位者に直接批判の矛先を向けたが、道元禅師は批判において上位者と下位者とを区別しなかった。昌益において、身体は「米」であり、全ての根本であり最も大切なものであった。道元禅師において、身体は最下級の、生命の依りどころとして受けたものであり、最上級の功徳を成就するために、惜しんではいけないものであった。昌益において、真の生き方は、安らかに直耕を行い米穀を生じる農耕生活に生きることであり、道元禅師において、それは「慕古の心」を起こすことにより、仏祖からもたらされる生き方を辿ることであった。昌益の云う時は、自然の進退する「気」としての「十気(とき)」であり、道元禅師が示した時は、「つらなりながら時々なり」という自己の全存在となる「有時(いうじ)」であった。昌益と道元禅師はともに、人間が主体的存在であることを説いた。昌益は、上に立つものの貪る欲心とそれを羨む下の衆人の欲心の邪気が、大乱による殺人を患い悲しむ汚気が、呼気として吐き出されて、飢饉による餓死、病死を惹き起こすと説いた。道元禅師は、前業にひかれて在るだけで真実ではない今の自身から、菩提心を起こして因を修行して結果がつくよう努めることの大切さを説いた。昌益は男女を互性ととらえたことから、道元禅師は男女を相対させなかったことから、ともに男女に上下をつけなかった。昌益は、上下二別の現実社会にあって、社会的上位者が互性に生きることにより本来の社会的人間関係が実現されることを信頼した。道元禅師は、現実社会では上位者が明主であっても下の民が暗人のために同事が未完成となるからこそ菩薩の行いを説いた。昌益は囲炉裏の鍋の調理過程と自らの顔面の器官の観察から、生死が互性であることを理解することで、道元禅師は古仏を慕い、生死が前後際断であることを覚了することで、それぞれ生死をはなれることになると説いた。
著者
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藤井 義博
藤女子大学人間生活学部食物栄養学科・藤女子大学大学院人間生活学研究科食物栄養学専攻
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藤井 義博
藤女子大学 人間生活学部 臨床栄養学研究室
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藤井 義博
藤女子大学人間生活学部食物栄養学科藤女子大学大学院人間生活学研究科食物栄養学専攻
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藤井 義博
藤女子大学・人間生活学部・教授
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