食事療法の歴史的意味 : 序説

概要

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17世紀に始まった医学・医療の科学化は、医療さらには患者ケアの枠組み(パラダイム)の変革をもたらした。その結果、食事ケアは現代の患者ケアの枠組みの中にしっくりと嵌らなくなっている。古代ギリシャにおいては、食事療法は生活の仕方そのものと直結していた療法であり、また食事の仕方そのものが生き方と等価であったと推察される。古代ギリシャ・ローマ以来の医療の伝統であった医療の3本柱、すなわち養生(よい生き方)、外科療法、薬物療法は、アンブロワーズ・パレの生きた16世紀にも継承されていた。フローレンス・ナイチンゲールは、西欧の伝統的な考え方である良い生き方(bonne maniere de vivre)と直結する食事ケアがナースの大切な任務として再認識していた。道元は、典座が修行僧たちのために行なう食事ケアにおいて献身性と観察を要求した。日本のように発展を完了した国においては、社会的目的とこころ(魂)の栄養という食事の高次の目的が、基本的必要性としての食事の目的とともに大切である。そして、栄養士や管理栄養士の卵達の教育は、まず食事の目的を考えることから始めることが必要である。
2002-12-25