ヒッポクラテス医学における生活法 : 栄養療法の知的枠組みについての研究 I

概要

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古代ギリシャにおける医学すなわちヒッポクラテス医学は、生活法(古代ギリシャ語ではdiaitaという)による医学であった。古代ギリシャの医学は、哲学と密接な関係があり、また修辞学や哲学と肩を並べる、文化の高次形態であると認識されていた。医学は身体(ソーマ)の大切さを、哲学は魂(プシュケー)の大切さを強調するとはいえ、両者はよい生き方の構築と実践という同じ目的を有していた。生活法は、運動、食物、患者の体格、年齢、季節、風の変化、居住地の状況、年の構成など多様で異質な内的あるいは外的諸要素と個人との関係に注目する構造であった。ヒッポクラテス学派の医師達は、治らないと判断された患者を、医学の無力さを自覚するが故に診ることを拒絶した。生活法のゴールは、国家における生活そのものと同義であった仕事を再びできるようにするという目的のためにのみ患者の健康を回復することであった。古代ギリシャ語のdiaitaとラテン語のdiaetaとregimenとは、生活法という意味を持っていたが、現代英語のdiet、現代仏語のdieteとregimeにおいては、この原初の意味を失って、飲食と食事にのみ関係した意味を持つようになった(ただし現代英語のregimenは生活法という意味を保持している)。ヒッポクラテス医学における生活法は、複雑系における考察という視点を持っていたが、これはクロノス(時間)と共にもうひとつの時の枠組みであるカイロス(時機)を大切にしていたことと関係があるように思われる。ヒッポクラテス医学においてはカイロスを評価していたことが、ヒッポクラテス学派の医師達に、臨床の場という複雑系において、要素還元的思考に抵抗して臨床的思考を発展させることを手助けしたと思われる。
2003-12-25

ヒッポクラテス医学における生活法 : 栄養療法の知的枠組みについての研究 I

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