オーチャードグラス再生初期の貯蔵窒素の利用性
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概要
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オーチャードグラス株窒素の貯蔵時とその再生時の利用性を知るため,水耕栽培のオーチャードグラスの生育各期に標識窒素(^<15>N-硝酸アンモニウム)を吸収させ,刈取残部の各期の貯蔵窒素の再生組織での利用を調べた。^<15>N処理は各期とも1週間で処理(I):刈取の3-2週間前,(II):刈取の2-1週間前,(III):刈取前1週間,(IV)および(V):刈取後の1週間とした。なお水耕液の窒素濃度は処理(I)-(IV)は全期間をN:40ppm,(V)は刈取後の追肥効果を想定し,刈取まではN:20ppm,刈取後は40ppmとした。オーチャードグラスの刈取時の生育状況は草丈・再生部乾物重ともN:40ppmがN:20ppm区より高かったが,これは前回の刈取後1週間の再生量の差に由来するものであった。刈取時の全植物あたりの窒素含有量はN:40ppmでは平均185.8±29.0,N:20ppmでは111.9mg/pot,刈取残部(刈株+根部)はN:40ppmは平均78.2±14.9,N:20ppmは37.1mg/potと,N:40ppmは20ppm区にくらべ著しく高い値を示し,刈取後の初期再生量の差はこの貯蔵窒素量の差により生ずるものと考えられる。刈取後は全ての処理区ともN:40ppmで栽培され,刈取1週間後の刈取残部の窒素含有量は処理(I)-(IV)は67.0±14.4mg/potと刈取時にくらべ少なく,再生部への窒素の転流が認められるが,処理(V)では50.2mgと刈取時より多く,刈取残部への吸収窒素の流入が顕著に認められた。処理1週間での^<15>N標識窒素の刈取残部への取込みは,何れの生育期とも刈株部が全窒素の32-35%,根部が11-22%で,刈取残部全体では全窒素の25-30%となった。各時期に吸収された^<15>N標識貯蔵窒素の刈取残部から再生部への移行を見ると,処理(I)では28.8,(II)では33.7,(III)では45.7%となり,窒素は貯蔵時期により再生時での使われ方がことなる。すなわち刈取時に近い時期に貯蔵された窒素ほどその後の再生時の利用性も高いと言える。また刈取後低窒素から高窒素条件にすると,窒素の吸収が急に高まり,その分だけ再生時の貯蔵窒素にたいする依存度が低くなるが,刈取後一週間での再生部ではその窒素の約50-60%が刈取前の貯蔵窒素に由来することが示された。
- 日本草地学会の論文
- 1991-07-31
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