烏骨鶏体内に発現する黒色色素の性質とその部位特異的な分布

概要

論文の詳細を見る
烏骨鶏は, 体内の様々な部位において黒色色素の発現のある極めて稀な家禽である.我々は, 烏骨鶏の色素沈着過度形質の原因を探るため, 烏骨鶏体内の各組織について色素分子の発現量およびその性質を調べた.赤外吸収スペクトル測定による定性分析では, 烏骨鶏体内から抽出された色素はいずれも既知のメラニンとよく似た構造的性質を示した.また, 生殖腺由来の色素分子は羽毛や骨膜由来のものよりS(硫黄)を多く含むことが示唆された.色素のアルカリ溶液の吸光度(540nm)測定による定量結果からは, 骨膜や生殖腺で色素発現量が有意(p<0.05)に多いことがわかり, 黒色色素が組織特異的に分布していることが明らかになった.骨膜等に沈着する色素と羽毛由来の色素の間に性質上の顕著な違いが見られないことを考え合わせると, 過剰かつ拡散した色素発現の原因は色素の生合成過程ではなく, メラニン細胞の分配にあると考えられた.心臓の動脈内壁や頭部の内臓頭蓋等, 神経堤を発生起源とする細胞が局在する部位で局所的な色素の発現が観察された.烏骨鶏におけるメラニン細胞の過剰な分布は, 胚の発生段階における神経堤細胞の体内移動時に生じ, その範囲が神経堤由来組織にまで拡大した, という仮説が考えられた.
社団法人日本獣医学会の論文
2000-04-25

烏骨鶏体内に発現する黒色色素の性質とその部位特異的な分布

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク