Aspergillus nigerの酸性フォスファターゼの性質と局在性
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概要
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工業的に広く利用されているかびの菌体外加水分解酵素の多くは糖蛋白であることが知られている. われわれはかびの水解酵素分泌機構の解明を目的とし, クロカビの酸性フォスファターゼを実験材料として研究を始めた. まず酸性フォスファターゼの存在様式とそれぞれの実体を明らかにすることが必要であり, 今回はそれらに関する基礎的知見を報告する. Aspergillus niger U20-2-5(アデニン要求株)によって生産される酸性フォスファターゼ活性は, 培養濾液(細胞外酵素), 石英砂と共に菌体を磨砕して得た菌体抽出液(細胞内酵素), および抽出残渣中に認められ, 残渣中の活性は"Onozuka(近畿ヤクルト)"で処理するころにより可溶区分に回収された(細胞結合酵素). 得られた細胞内酵素と細胞結合酵素の活性の和は凍結乾燥, アセトン乾燥菌体で測定した酵素活性とほぼ等しかった. 局在性の異るこれら三種の酵素をそれぞれアセトン沈殿, Sephadex G-200ゲル濾過した後, 活性区分のDEAE-cellulose column chromatographyによって検討した結果, 本菌の生産する酸性フォスファターゼは三成分, e, i, bより成ることが示された. 三成分の最適pH (4.0), pH安定性, 熱安定性, p-nitrophenyl phosphateに対するK_m値(1.0mM), およびsodium lauryl sulfate以外の阻害剤の効果にはほとんど差はなかった. しかしこれら三成分の局在性, 分子量, disc electrophoresisによる移動度, DEAE-cellulose columnの溶出パターンには差が認められた. 成分eはpH 7.0における負の荷電量が最も少なく, 分子量は39万で, 細胞外酵素中にのみ認められた. 成分iは細胞内酵素中に多く存在し, 細胞外酵素中にも存在する. pH 7.0における負の荷電量は成分eよりも多く, 分子量は32万であった. 成分bは細胞結合酵素中に存在する唯一の成分で負の荷電量は三成分中最も多く, 分子量は26万であった. また精製成分eおよびiは"Onozuka" 処理により共に成分bに変換した. したがって細胞の不溶性成分と結合状態にある酵素から成分bが生じると考えられるが, その元の実態については目下不明である.
- 社団法人日本生物工学会の論文
- 1974-06-25
著者
-
島田 裕司
阪大・工・醗酵
-
島田 裕司
大阪大学工学部醗酵工学科
-
新名 惇彦
大阪大学工学部醗酵工学科
-
江夏 敏郎
大阪大学工学部醗酵工学科
-
新名 惇彦
大阪大学 工学部醗酵工学教室
-
江夏 敏郎
大阪大学工学部 醗酵工学教室
-
江夏 敏郎
大阪大学 工学部醗酵工学教室
-
新名 惇彦
大阪大学工学部発酵工学教室
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