ブナ枯死実生の発生経過とそれに関連する菌類
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
ブナ林の更新初期過程について基礎的な知見を得るために、枯死実生の発生経過とその原因について調査した。当年生実生の枯死は5月下旬から7月下旬の2ヵ月間に集中して起こり、それ以降、枯死する実生はほとんど認められなかった。1年生稚樹の生存個体は生育期を通して穏やかに減少した。当年生実生の死亡率は相対照度の低い林床で高く、光条件が実生の消失に関与する重要な要因の一つであることが示唆された。枯死個体は当年生実生では4種類のタイプに、1年生稚樹では3種類のタイプに類別できた。当年生実生の枯死個体の発生時期はタイプによって明らかに異なっており、昆虫あるいは小型哺乳動物による食害と菌類による立枯病が重要な役割を果たしていることが明らかとなった。1年生稚樹では、冬芽あるいはそれから展開中の葉の昆虫等による被害が、枯死に至る重要な要因であると考えられた。立枯病に罹病した当年生実生の胚軸からはColletotrichum dematium(PERS.ex FR.)GROVEが高率に分離された。接種試験の結果、本菌はブナ当年生実生に病原性を有することが明らかになった。これらの結果から、本菌が実生の枯死・消失に重要な役割を果たしていることが示唆された。
- 日本森林学会の論文
- 1994-07-01
著者
-
庄司 次男
森林総研東北
-
窪野 高徳
森林総合研究所東北支所
-
佐橋 憲生
森林総合研究所東北支所
-
庄司 次男
森林総合研究所東北支所
-
窪野 高徳
(独)森林総合研究所
-
窪野 高徳
森林総研東北支
-
佐橋 憲生
森林総合研究所九州支所
-
庄司 次男
森林総合研究所
-
佐橋 憲生
森林総合研究所
-
窪野 高徳
森林総合研究所
関連論文
- コナラとミズナラの堅果に対する Ciboria batschianaの病原性
- マツ材線虫病によるアカマツ年越し枯れ過程における水分生理状態の変化
- (417) シラカシ枝枯細菌病の発病に及ぼす温度,感染時期および新梢展開後の日数の影響(平成18年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- (351)シラカシ枝枯細菌病の病徴進展に及ぼすMacrophoma属菌の影響(平成16年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- (374)シラカシ枝枯細菌病菌に対する抗血清の特異性(平成14年度 日本植物病理学会大会講演要旨)
- シラカシに枝枯れ症状を起こすXanthomonas属細菌の同定
- スギ枝枯菌核病の感染部位および菌糸束・菌核と病斑形成との関係
- (9) ナラ類集団枯死被害に関連する菌類の病原性
- ナラ類集団枯損被害に関連する菌類
- (19) ブナから分離されたエンドファイト : その季節変動と器官特異性 (東北部会)
- (18) ナラ類の集団枯損に関連する菌類とその病原性 (東北部会)
- (243) キリ樹におけるキリてんぐ巣ファイトプラズマの季節的消長 (2) (日本植物病理大会)
- (22) キリ樹におけるキリてんぐ巣ファイトプラズマの季節的消長 (東北部会)
- てんぐ巣病罹病キリ樹の樹皮におけるファイトプラズマの分布と季節的消長
- (174) 東北地方におけるキリてんぐ巣病の発生状況 (日本植物病理大会)
- (131) 立枯症状を呈したブナ当年生実生から分離された Colletotrichum dematiumの病原性と早急な枯死に果たす役割 (日本植物病理大会)
- (19) PCRによるキリてんぐ巣病診断のためのプライマーの検討 (東北部会)
- キリてんぐ巣病 MLO のリボソームタンパク質と 16 S rRNA 遺伝子の増幅およびこれら増幅 DNA の塩基配列
- ブナ枯死実生の発生経過とそれに関連する菌類
- (178) キリてんぐ巣病MLOのPCR法による検出に及ぼす試料の採取時期と採種部位の影響 (日本植物病理学会大会)
- (169) PCR法によるキリてんぐ巣病MLOの植物体内からの検出 (日本植物病理大会)
- (168) キリてんぐ巣病ML0の16S リボソームおよびリボソームタンパク質遺伝子のPCRによる増幅とクローニング (日本植物病理大会)
- 長野県南部で発生したヒノキ集団枯損被害
- 南西諸島において異なる9種の樹木から分離された南根腐病菌(Phellinus noxius)の相互接種試験(予報)
- 標高変化に伴うブナ葉内生菌相の変化に関する研究
- 保全講座4 : 微生物による病気の伝搬の機構(樹木医学の基礎講座)
- ブナ葉内生菌の地理的分布に関する研究
- 熊本県阿蘇地方におけるスギ人工林の根株腐朽被害に関与する担子菌類
- 菌類との共生が樹木の生死を握る(うごく森3)
- 21世紀の"マツ枯れ"研究の展望(マツ枯れ)
- 樹木医学会第3回現地検討会記録
- スギ黒点枝枯病菌, Stromatinia cryptomeriae, の寄主範囲
- コナラ属3樹種における葉内内生菌優占種の分離率変動(第7回大会ポスター発表要旨)
- (39)ブナ科樹木の集団枯死に関与するRaffaelea quercivoraの病原性
- (26) ヒノキ漏脂病の病原学的検討(3) (昭和63年度地域部会講演要旨(秋季関東部会講演要旨))
- 内生菌感染経路解明へのアプローチ : イチイガシ袋がけ試験(第8回大会ポスター発表要旨)
- サクラてんぐ巣病の病枝切除と薬剤による防除試験
- サクラてんぐ巣病菌(Taphrina wiesneri(RATH.)MIX)の培養性質
- (7) Taphrina wiesneri (Rath.) Mixの生活史と病原性 (東北部会講演要旨)
- (7) 苗床にすき込んだ緑肥残渣における立枯病菌の腐生生活 (昭和41年度地域部会講演要旨(東北部会))
- 707. 針葉樹稚苗の立枯病発生と土壌のpHとの関係(第75回日本林学会大会講演要旨)
- 308. ダグラスファーの先枯病(第74回日本林学会大会講演要旨)
- 510.針葉樹苗の雪腐れをおこす新病害くもの巣病と黄カビ病(第72回日本林学会大会)
- 針葉樹苗の雪腐病に関する研究(第71回日本林学会大会)
- (3) Rhizina inflata (Schaeff. )Karst. の生態 (東北部会講演要旨)
- 東北地方のスギ、アカマツおよびカラマツ種子産地試験地における病害の発生状態
- 708. カラマツ先枯病の発生と気象条件 : とくに気温と降雨量について(第75回日本林学会大会講演要旨)
- 518.カラマツ属各種の落葉病と先枯病にたいする耐病性(第72回日本林学会大会)
- (110) Melanconium sp. によるクリの褐色いが腐病 (新称) (昭和57年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- (194) マツ類つちくらげ病に関する研究 : 被害地における病原菌(Rhizina undulata)の捕捉法 (昭和56年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- スギ黒粒葉枯病に関する研究(II) : 春季形成子のう胞子の放出と発芽条件
- (15) Chloroscypha seaveri (Rehm) Seaver(スギ黒粒葉枯病菌)子のう盤の形成条件 (昭和53年度地域部会講演要旨(東北部会))
- スギ黒粒葉枯病に関する研究(I) : 子のう胞子の放出および発芽条件
- (5) スギ黒粒葉枯病菌(Chloroscypha seaveri(Rehm)Seaver)子のう胞子の生理生態的性質 (東北部会講演要旨)
- E227 カシノナガキクイムシの繁殖成功度とミズナラの生死(生活史・分布)
- (22)スギ枝枯菌核病とスギ褐点枝枯病の同根関係の証明(東北部会講演要旨)(平成15年度地域部会講演要旨)
- Pycnostysanus azaleaeによるツツジ類の芽枯病(新称)
- ツチカメムシの吸汁が引き起こす散布後のカスミザクラ種子の腐敗
- サクラに繁殖していた樹皮下穿孔性キクイムシから分離された1新種Ophiostoma ssiori sp. nov.
- スギ枝枯菌核病とスギ褐点枝枯病の同根関係
- ナラ類集団枯損被害を引き起こす病原菌と感染様式
- (50)Raffaelea quercivoraに対するミズナラの防御反応(平成15年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- 水ストレス下のミズナラ苗に対するナラ菌接種試験(第6回大会ポスター発表要旨)
- スギ黒点枝枯病の伝染環
- (81) 外国産マツ類におけるこぶ病罹病度の比較 (平成元年度日本植物病理学大会講演要旨)
- アカマツ切り枝における安息香酸吸収とマツノザイセンチュウ接種による発病枯死経過
- スギの生長におよぼす黒粒葉枯病の影響
- スギ黒粒葉枯病に関する研究(III) : 菌そうの培養的性質
- 白神山地における林道沿いのブナの水分生理状態(第6回大会ポスター発表要旨)
- Gloeosporidina cryptomeriaeによって引き起こされるスギ黒点枝枯病の病徴とその進展過程
- 安息香酸を吸収させてマツノザイセンチュウを接種したアカマツの木部仮道管壁孔の解剖学的観察
- C12 Steinernema属各種線虫およびHeterorhabditis heliothidisのマツノマダラカミキリに対する殺虫効果(線虫学)
- ヒノキ黒粒葉枯病菌の生理的性質
- カシ・ナラ類枝枯細菌病の発生傾向と被害対策
- 樹木医学会第13回大会報告
- スギ花粉の飛散を抑えるSydowia japonicaの感染機構
- ヒバ林の現状と未来
- Stromatinia cryptomeriae Kubono et Hosoyaによるヒノキ黒点枝枯病(新称)
- ヒバ実生根面の不完全菌類
- ナラ類集団枯損被害地におけるカシノナガキクイムシの穿孔数とミズナラ萎凋の関係
- マツ材線虫病の年越し枯れ過程における水ポテンシャルと蒸散速度の変化
- 東北地方のヒバ天然林及び人工林における漏脂病被害実態と被害形態の把握
- サクラノキクイムシから分離された菌類およびサクラノキクイムシと主要随伴菌を用いた接種試験
- サクラ系統の病害調査(中間報告)
- カシ・ナラ類枝枯細菌病の発生傾向と被害対策
- 東北地方における森林被害と森林環境保全について考える
- スギ花粉の飛散を抑える Sydowia japonica の感染機構