(39)ブナ科樹木の集団枯死に関与するRaffaelea quercivoraの病原性
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概要
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1980年以降,日本海側を中心にブナ科樹木(特にミズナラとコナラ)の集団的な枯死が発生し,被害は現在も拡大する傾向にある.枯死木には例外なくカシノナガキクイムシの穿入が認められるが,穿入を受けた個体全てが枯死するわけではない.枯死木の変色部,カシノナガキクイムシの体表と菌のうからはRaffaelea属菌が優占的に分離され,この菌を新種R.quercivoraと命名した.この菌の病原性を明らかにする目的で,ミズナラ(DBH 9cm)とコナラ(DBH 16cm)に対する接種試験を行った.前者では接種7日,後者では14日目に水ポテンシャル値が低下して萎凋症状が発現し,1ヶ月以内にそれぞれ90%の個体が枯死し,接種菌が再分離された.またブナ科6樹種の苗木に対する接種試験では,ミズナラとコナラでは枯死が発生したが,その他4樹種には枯死の発生はなかった.これらの接種試験の結果から,新種として報告したR.quercivoraは,ミズナラとコナラに対して病原性があることが確認され,現在発生しているブナ科樹木の集団的な枯死被害は,カシノナガキクイムシの伝播するR.quercivoraによって発生すると判断された.
- 日本植物病理学会の論文
- 2003-02-25
著者
-
窪野 高徳
森林総研
-
窪野 高徳
森林総研東北
-
窪野 高徳
(独)森林総合研究所
-
窪野 高徳
森林総研東北支
-
伊藤 進一郎
三重大生資
-
村田 政穂
三重大生資
-
山田 利博
東大田無試験地
-
村田 政穂
東京大学アジア生物資源環境研究センター
-
山田 利博
東京大学大学院農学生命科学研究科附属千葉演習林
-
山田 利博
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林千葉演習林
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