歯の移動に伴うネコ歯肉血流量の変動
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概要
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歯に矯正力を加えると圧迫側の歯肉血流量が変動することは多くの研究者によって報告されている. その変動原因は, おもに歯の移動に伴う直接的歯肉圧迫と, 歯根膜から歯肉への血液供給量の減少によるものとが考えられている. しかし, 変動のおもな2つの要因が歯肉血流量の変化に際しておのおのどの程度関与しているのかを明らかにした研究はみられない. そこで歯に力を加えたときの歯肉血流量の変動を観察するとともに, その変動の原因を解明するために以下の実験を行った. 実験動物には, 体重4〜5kgの雄の成ネコ10匹を用いた. 全身麻酔下でネコの上顎右側犬歯に近心方向に50, 100, 200, 300および500gの荷重を加え, レーザードップラー血流計測法を用いて遊離歯肉および付着歯肉の血流量の変動を観察した. 荷重時間は15, 30, 60および180秒とした. 次に, 荷重時, 歯肉圧迫部位となるネコ上顎右側犬歯近心の歯質を歯肉に損傷を加えないように注意し, 歯肉溝最深部まで切削除去した. その後, 前述と同様の荷重を上顎右側犬歯に加え, 圧迫側歯肉の歯肉血流量の変動を測定した. 歯の近心歯質を切削しないで荷重を加えた場合, 荷重の増加に伴い歯肉の血流量は減少し, その変動は遊離歯肉でより顕著にみられた. 一方, 歯を切削するとこれまでみられた荷重による歯肉血流量の変動はほとんどみられなくなった. 歯に力を加えると圧迫側の歯肉血流量は減少するが, 直接歯肉を圧迫している歯質を切削することによりその減少がほとんど観察されなくなった. このことから歯に力を加えた際にみられる歯肉血流量の変動は歯の傾斜による歯肉の圧迫によるもので, 歯根膜からの血流の減少が関与しないことが示唆された.
- 大阪歯科学会の論文
- 1996-03-25
著者
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