急速拡大法の後戻りに関する実験的研究
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概要
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上顎歯列弓の急速拡大により, 頭蓋の多くの縫合部に偏位が起き, この偏位が歯列弓拡大の後戻りに関与しているといわれている. これを防ぐためには保定が必要になるが, 保定期間と後戻りとの関係は明らかではない. そこで, 急速拡大後の鼻上顎複合体における各縫合部の形態学的および組織学的変化と保定期間との関係を検討した. 実験群として急速拡大装置を装着したカニクイザル6頭を2頭ずつ3群にわけ, 急速拡大を行い, それぞれ1, 3および6か月間保定を行った. 保定期間の終了後に装置を除去し, 各群を保定終了後1か月および3か月間飼育して観察した. 正中口蓋縫合では保定期間6か月群においても組織の修復がみられ, 形態学的観察でも後戻りが観察されたが, 保定期間1か月および3か月群に比べて著明に減少した. 頬骨上顎縫合では保定期間1か月群の組織像に著明な骨改造現象が起こり, 結合組織線維の圧縮された像が観察された. 保定期間が長くなるに従って改造能力は低下していた. また, X線像では保定期間3か月および6か月群でも変化がみられた. 頬骨上顎縫合は広範囲であるため内部応力は分散され, 組織像として現われにくいが, 後戻りは残存していると思われた. 頬骨側頭縫合, 前頭頬骨縫合では保定期間終了後1か月よりも保定期間終了後3か月の組織像に結合組織線維の伸展, 緊張がみられX線像でも差がみられた. 頭部の最も外側にある縫合であるため, 矯正力の影響が最も遅く, 最も長く残存したと思われる. 前頭上顎縫合では組織学的にすべての実験期間において, わずかだが持続的な反応がみられた. X線惨では著明な変化は観察できなかった. 後戻りの程度と時期は縫合部により異なった. 鼻上顎複合体の複雑さに加えて, 後戻りの原因の一つである内部応力が広範囲の縫合部に影響するため, 6か月間の保定期間を設定しても避けることは不可能であることが示唆された.
- 大阪歯科学会の論文
- 1996-03-25
著者
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