化学教育における平衡をめぐる理解と誤解について
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概要
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この論文では,中等高等化学教育における平衡の理解をすすめ指導法を改良するため,平衡に関連してみられる疑問や誤解や思い違いをひろくとりあげ,検討する。生徒や学生が正確に教えられていないことを示唆する思い違い,模型を採用することで生まれる誤謬,動的平衡の歴史的な文献の記述にみられる誤解の伝播,古い化学の解釈を現代化学にそのまま持ち込む誤謬,表記法があいまいなため生まれる誤解,などである。まず,平衡の確認方法を取り上げる。ここでは,系の停留性と可逆性と復帰性の意味や,系の小部分間の相互作用の理解が要点であることを示す。次に,平衡の表現法を述べる。熱力学的法則や古典的化学平衡定数にふれ,質量作用の法則に関連する誤解のゆえんを分析する。最後に,動的平衡の理解と誤解について述べる。動的平衡の説明において,演示用化学実験のみならず,よく引用される同位体交換反応実験には,うっかりする落穴があることを指摘する。こうして,化学教育において,平衡と化学平衡の何を教授し,どこに注意をはらうべきかをあきらかにしようと試みる。The concept of equilibrium in chemistry education is put forward for consideration from a standing point of view such that: It is not taught correctly to students so that several misconceptions occur; using models for it makes some mistakes; many misunderstandings in the old chemistry and in the historical literature are now circulating in modern chemistry, and so on. This paper shows that: First, a method for confirming state of equilibrium needs to understand termination, reversibility, returnability, and interaction between subsystems. Secondly, representation of equilibrium relates to the second law of thermodynamics, the classical chemical equilibrium constant, and the law of mass action. Last, there are understandings and misunderstandings of dynamic equilibrium in both chemical experiments for student demonstration and interpretation of isotope-exchange reaction. We thus try to clarify how chemical educators should pay attention to what is taught in both equilibrium and chemical equilibrium.
- 上越教育大学の論文
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