中等物理化学教育における物理量の表現とその導入法について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
現代の物理や化学では,2N,10m,2g/cm^3のような,表現(数字列)(空白)(単位記号)が使われている。本稿では,この表現を処理する場合,分解して数字列の代数演算をするならば日本算数方式とよび,まとめてそのままあつかうならば国際方式とよぶ。日本の中等物理化学教科書には,日本算数方式の伝統があり,国際方式は国際文書や英語圏の教科書などを含めて,世界で広く採用されている。両者のあつかい方を分析し,相違の四論点として,「(数字列)(空白)(単位記号)は物理量(の表現)」「数字列は数でない」「空白はかけ算」「単位は物理量」を抽出した。このとき,国際方式の判定条件として,複数の表現を直接的に乗除算していること,を採用した。また,「単位は物理量」とはっきりと意識しているか否かは,ケルビンとセルシウス度との間の換算式をみて判定した。国際方式は,歴史的地理的に温度差はあるけれども,これらの四論点を肯定する方向に進んでいるように思われる。日本算数方式による物理化学教科書では,物理量の意識がきわめて薄いことがわかる。そこで,日本の中等物理化学教育では,どのような順序で四論点を肯定的に導入するべきかを論じた。さらに,物理量間の演算では,代数演算で利用される比例式や方程式に替えて,常に物理的に意味のある表現を逐次たどるべきであるとした。Expressions (string of Arabic numerals)(space)(symbol of units), such as 2 N, 10 m and 2 g/cm^3, appear in the physical and/or chemical literature. There are two methods of operating such expressions; hereafter, one is called an arithmetical method which deals with all expressions under the rules of arithmetic; the other is called an international method in which every expression obeys the rules of quantity calculus. The former is adopted in many textbooks of Japan, and the latter is of world-wide use in international documents and textbooks in English. The present note makes four points of the argument clear such that: The expression stands for a physical quantity; the string of Arabic numerals is not a number but a numerical value; the space means a mark of multiplication; and the symbol of units denotes a physical quantity. Then a given method of operation can be regarded as international when the expressions are multiplied and/or divided directly by themselves. Whether the unit is a physical quantity or not in textbooks, is judged in terms of conversion relationships between degrees in Kelvin and Celsius. It seems that the international method has been developing gradually according to the direction of the four points, and that there is little sense of physical quantities in physical/chemical textbooks which make use of the arithmetical method. The present note hence discusses a course for teaching the four points in the physical/chemical education of the junior/senior high schools of Japan, and suggests that every physical/chemical problem should be solved step by step by use of the physical expressions.
- 上越教育大学の論文
著者
関連論文
- 表計算ソフトを活用した量子準位を求める教材
- 化学電池を教材とするエントロピーとギブスエネルギーと熱力学的可逆過程の導入法について
- 熱力学的物理量としての温度の導入法について
- 科学教育における「質量保存」の法則 : 「教えられないこと」をめぐって
- 物質量とモルをめぐる「思い違い」 : 教師教育のための分析と教材化
- 科学教育における「記述論理」と物質に関する「巨視的概念」の形成について
- 化学量論に基づく物質量の指導法とその学習過程における高校生の理解の分析
- 物理化学教育における化学数理 : 分布と誤差について
- 物質量とモルに関る教具-開発と利用-の研究
- 図の同値関係を用いる「理解の程度」の測定 : 乾電池の「並列つなぎ」を例にとって
- 物質量とモルの授業計画ー方法と展開ーについて
- 物質量とモルの指導案ー考え方と授業実践ーの研究
- 分割法による大規模共役系のケクレ構造の総数とPauling Bond Orderの計算
- Li^+イオンと Fully-benzenoids との相互作用
- 合成法による大規模共役系のケクレ構造の総数と Pauling bond order 計算
- WWW上の化学教育活動と「化学教育ジャーナル(CEJ)」のめざすもの
- WWW 上の化学教育活動と「化学教育ジャーナル(CEJ)」のめざすもの
- フラレン類とそれらの部分構造におけるケクレ構造数え上げのアルゴリズム
- 表計算ソフトを活用した歪量子井戸構造のバンドギャップおよびバンド不連続の計算と教材への活用
- 英文で読める文学教育雑誌を散見する
- 発光ダイオードを用いた光電効果の実験
- 発光ダイオードを用いたプランク定数の実験
- 歪量子井戸構造のバンド不連続の計算と教材への応用
- 中学理科の観察・実験器具の基礎操作技能指導の改善に関する研究
- 半導体の表面準位
- 科学の学習過程にみられる「思い違い」 : 教師教育のための分析と教材化
- 化学教育における物質量の測定法と生徒の学習上のつまづきについて
- 化学教育における平衡をめぐる理解と誤解について
- 中等物理化学教育における物理量の表現とその導入法について
- 教育的効果を期待する「選択式演習問題集」作成のためのアルゴリズムとデータ構造
- 教育的効果を期待する 「選択式演習問題集」 作成のためのアルゴリズムとデータ構造
- エネルギーの物理化学的諸性質と導入時の問題点
- Common Lispによるポリヘックス上のケクレ構造の数え上げ
- 物理量としての単位モルの導入法について
- 「CSSJ化学の学校」と化学教育活動について
- 科学教育における量の計算法について
- 物理量としての単位モルの導入法について
- 初等中等科学教育における物理量と単位系について
- 燃焼に関する疑問について(周期律)
- 初等中等科学教育における物理量と単位系について
- 化学平衡を演示するための自己酸化還元型電池
- 電池の原理と構造を理解するための自己酸化還元電池
- 英文で読める化学教育雑誌を散見する
- 試験管気泡法による化学物質の反磁性・常磁性の簡易判別実験
- 化学教育における物質量の測定法と生徒の学習上のつまづきについて
- 電流とイオン流との間の「類推」の実験学習
- 「物質量とモルは物理量である」について(フォーラム)
- 物質量とモルの授業計画ー方法と展開ーについて
- 物理化学教育における化学数理 : 分布と誤差について