京都におけるケナフの畑地と水田栽培の生育の比較およびその害虫(農学)
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概要
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京都市下鴨の京都府立大学附属下鴨農場の畑地と水田で1999年6月∿12月にケナフを栽培し, その生育を比較した。また, ケナフの昆虫を調査し, 隣接栽培したオクラのそれと比較した。他地域でケナフの重要害虫の1種として知られるワタノメイガの寄主選好性を調べた。さらに, タイにおいてケナフ栽培とその害虫の実状調査をおこなった。(1)ケナフは畑地に比べて, 水田では生育が劣り, 茎長と茎径は畑地(376.5cmと4.36cm)のそれぞれ約74%と47%にすぎなかった。主茎の乾物重も水田でのほうがかなり低かった。(2)両栽培条件におけるケナフのセルロース含量は, 畑地では, 皮部50.6%, 芯部37.8%, 水田ではそれぞれ39.6%, 25.9%であった。(3)ケナフを摂食していた昆虫は6種が記録され, 常にみられたのはワタアブラムシだけであった。ワタノメイガはケナフを摂食してなかったが, 隣接したオクラには秋期に寄生していた。(4)ワタノメイガはケナフ飼育では, オクラ飼育に比べ, ふ化から羽化までの生存率が有意に低く, 発育所要日数も長くなった。また, 雌成虫はケナフよりもオクラに選好産卵する傾向があった。(5)タイでは, ケナフ栽培面積は1970年代の54万haから約5万haに減少していた。これは, ケナフが紙パルプ原料としてあまり使用されなくなったことにも起因する。タイのKhon Kaen Field Crops Research Centerに栽植されていたケナフには, ワタアブラムシの他甲虫の1種(未同定)しか確認できなかった。(6)水田では畑地に比べケナフの生育が遅れたが, 落水後の生育は畑地とほぼ同様の様相を示した。このことから, 水田で栽培する際は水管理を適切におこなうことによって生育の向上が期待できる。また, 両栽培条件ともケナフを摂食する昆虫は少なく, 生育に影響を及ぼした昆虫はいなかった。したがって, ケナフは調整水田における転作作物の一候補になりうると考えた。
- 京都府立大学の論文
- 2000-12-25
著者
-
吉安 裕
京府大院・応用昆虫
-
吉安 裕
近畿支部
-
土屋 英男
京都教育大学教育学部産業技術科学科
-
土屋 英男
京都教育大学教育学部
-
森 重之
京都府立大学農学部
-
吉安 裕
京都府立大学大学院農学研究科応用昆虫学研究室
-
鈴木 志保
京都府立大学農学部応用昆虫学研究室
-
吉安 裕
京都府立大学大学院生命環境科学研究科
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