窒素形態の差異と蔬菜の生育 (第3報) : 培養液の各種陽イオン濃度ならびにpHとの関係

概要

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数種の蔬菜を水•砂耕し, 窒素として NO3-N, NO3+NH4, NH4-N を与え, 各窒素形態ごとに培養液の Ca, Mg, K 濃度または pH レベルを変え, 生育•体内無機成分におよぼす影響を調べ, それぞれの好適条件を比較しようとした。1. カンランでは NO3+NH4, NH4 両区は NO3 区に比べ Ca を多く必要とし, NO3+NH4 区は Ca濃度を高くすれば NO3 区に匹敵する生育を示したが, NH4 区はおよばなかつた。コカブでも Ca 濃度を上げると生育は増加するが, NO3+NH4 区でも NO3 区にはおよばなかつた。一方, ホウレンソウは各窒素形態区とも Ca 濃度を0.4m.e. 以上にしても生育はあまり増加せず, 両 NH4区とも NO3 区よりかなり劣つた。2. カンランでは Mg, K 濃度を上げても NH4 両区の生育は NO3 区に追いつけなかつた。3. Ca 欠乏症状はカンラン•コカブでは NO3 区の方がむしろ著しく, ホウレンソウでは NH4 側で著しかつた。Mg, K 欠乏症状も窒素形態により若干差がみられた。4. コカブ葉部の Ca 含量はホウレンソウに比べかなり高く, 大部分が可溶性 Ca で, 各窒素形態区とも Ca 濃度を上げると可溶性 Ca の割合が幾分増加した。ホウレンソウでは? Ca 濃度が低いと可溶性 Ca の割合が多いが, Ca 濃度が高くなると大部分が不溶性 Ca となり, とくにNO3 区に著しかつた。5. カンラン•インゲンの NO3 区は pH4〜7 の範囲内では生育にあまり差がないが, コカブでは? pH7 でクロローシスを生じ生育は低下した。NO3+NH4 区は pH4では各蔬菜ともかなり生育が劣り, pH の上昇とともに生育は増加し, pH7 では NO3 区に匹敵, またはこれを凌駕した。NH4 区も pH を上げると生育は増加するが他の窒素形態区に比べるとかなり劣つた。6. カンランで pH と Ca 濃度を組み合わせた実験では NO3 区は pH4, 7 とも Ca 濃度の増加に伴ない生育は増加したが, NO3+NH4, NH4 両区は pH4 では Ca 濃度を増しても効果がなかつた。しかし pH7 では Ca 濃度の増加に伴ない生育はかなりよくなり, とくに NO3+NH4 区に NO3 区に匹敵する生育を示した。
園芸学会の論文

著者

岩田正利
東京大学農学部

窒素形態の差異と蔬菜の生育 (第3報) : 培養液の各種陽イオン濃度ならびにpHとの関係

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