振動が果実の呼吸生理に及ぼす影響 : II. トマト果実の追熟に対する振動の影響
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概要
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1973年から1975年にかけて, トマト果実を1Gおよび3Gでそれぞれ1時間および5時間振動し, その後追熟中の呼吸強度, 着色状態, 果肉硬度, 可溶性固形物含量, 滴定酸度, 糖および遊離有機酸組成などの変化および完熟後の食味について調査した. さらに, 振動時の果実熟度が振動後の呼吸強度に及ぼす影響についても調査した.振動によって明らかな呼吸上昇が認められたが, 増加の程度は1G処理区で大きく, 3G処理区ではむしろ小さくなった. いずれも, 振動直後の呼吸増加は約60時間後まで継続した. その後 turning stage で処理した果実では明確なクライマクテリック•ライズがみられたが, マキシマムは3G処理区でやや早くあらわれてきた.一方, 3G処理区では果実表面の着色は一時的に遅れ,また内部ゼラチン部の着色がある程度異常になる傾向が示された.追熟中のグルコースおよびフラクトースの変化と振動処理との間には一定の傾向を認めることはできなかったが, クエン酸およびリンゴ酸についてはいずれも turningstage の3G処理区で振動処理中に一時的な増加が認められた. しかし, その後熟度の進展に伴って急速に減少し, 完熟時には1G処理区や無処理区よりむしろ含量は低くなった. また可溶性固形物含量も3G処理区でやや低くなる傾向であった.完熟後の食味は3G処理区でかなり低下した. 味が淡白になり, 肉質が粉質化する傾向が認められたが, その劣化の程度は pink stage の果実より turning stageの果実で大きかった. その他, 呼吸増加, 着色異常, 有機酸の一時的な増加とその後の減少などについても, 全体的に turning stage の果実を振動した場合に影響が明確にあらわれてきた.以上のような結果からトマト果実に対する振動の影響について論議し, トマト果実は振動刺激に対して生理的に一定の許容域を持ち, その範囲であれば振動刺激が大きいほど呼吸増加は大きくなるが, 刺激がさらに大きくなって許容域を越えると生理的に変調をきたし, 追熟がやや異常になって食味の低下がひき起されるものと推察した. さらに, turning stage の果実がもっとも敏感に反応し, 振動による悪影響を受けやすいことから, トマトの出荷熟度は生理的にはせめて pink stage 程度にすることが好ましいものと考えられる.
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