低体温で誘発される反復性膵炎の重症心身障害児の1例

概要

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症例は重度脳障害の15歳女児である。6歳時に膵炎を初発し、薬剤性膵炎を疑いvalproic acidを中止したが、9歳時に膵炎を再発し、以降現在までに計9回の膵炎を反復している。患児は脳障害に伴う中枢性持続性低体温を合併しており、夏期は体温35℃台、冬期は保温して33-34℃が平熱であった。本児の膵炎は冬期から初春に集中しており、学校や外出先で体温を長時間にわたり34℃以上に保てなかった後に発症していたこともあり、低体温の関与を疑った。重度の脳障害を伴う児において、中枢性低体温により膵炎を発症する機序は明確なことはわかっていないが、偶発的な寒冷暴露による低体温症、低体温療法、そして重度脳障害児における中枢性低体温の合併症として急性膵炎が報告されている。本児の中枢性低体温は、TRH負荷試験のTSH頂値の過大反応や早発乳房などの存在より、視床下部の障害が示唆された。低体温時には視床下部ホルモンであるTRHの合成分泌が促進することが知られている。また、TRHと膵炎に関しては、膵炎モデルラットに対するTRH analogの有効性が報告されている。本児においては、視床下部機能障害により体温低下時のTRHの合成・分泌が増加せず、TRHによる膵臓の保護作用が働かないことが、膵炎発症の機序を説明しうる仮説になりうると考えた。
2013-01-31

低体温で誘発される反復性膵炎の重症心身障害児の1例

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