数息観に関する心理学的研究(1)(萩野源一先生退職記念)
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概要
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数息観は,安般念などともいわれ,坐禅のとき息(呼吸)出入を数えながら精神の統一をはかる行法である。本研究では,以下に述べる数息観に関する5つの心理学的仮説を設定,実験を行なった。(1)呼吸数に注意をむけることによって雑念が生じることを防ぐ。(2)呼吸に注意をむけることによって,注意集中の状態が得られる。(3)呼吸に注意をむけることによって,意図的,無意図的に呼吸を制御する。(4)呼吸に注意をむけることによって,呼吸の弛緩相と緊張相が変化する。(5)呼吸を観察することによって,意識のパラダイムシフトが起こる。[実験I]数息の対象の差異が心理学的要因に及ぼす影響を検討し,呼気の数息は「数えやすい」,「安心する」の項目があてはまり,吸気を含んだ数息は「苦しい」,「難しい」の項目があてはまるという結果を得た。[実験II]数息の対象の差異が生理学的指標に及ぼす影響を検討し,条件差はみられないが,個人内で一貫した変化がみられ,数息の影響には個人差があることが示唆された。[実験III]数息の有無と意図的な呼気延長呼吸が,生理学的指標に及ぼす影響を検討し,意図的な呼気延長呼吸条件において数息は呼吸の延長を制御するという結果がえられた。以上,3つの実験の結果より,短時間,即時的な数息条件において,数息の心理学的影響はみられるものの,生理学的指標における条件差は認められない。しかし,個人内では,一貫した変化が認められることから,今後,数息の影響・効果を条件差の観点から検討していくとともに,個人差の観点からも検討,考察していく必要がある。
- 駒澤大学の論文
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