学生生活の充実感について(2)
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概要
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研究Iは,大学,短大生277人(大学生男子104人,女子76人,短大生女子97人)を対象とし,彼らに学生生活における質問紙C(36項目)を実施.学生生活における充実感の性質を明確にした。また,大学生男子61人,女子56人を対象とし,質問紙Cと2つのパーソナリティ変数(達成動機と意欲減退度)との関連をみた。研究IIは,大学生男子77人,女子46人に自由記述方式による質問紙D(13項目)を実施し充実感の内容について検討をした。結果は,以下のとおりであった。(1)充実感テストにおいて,大学生女子,短大生女子は,男子と比較して,平均得点が有意に高かった。大学生女子,短大生女子は,大学生男子よりも充実感が高かった。(2)充実感テストの36項目中,大学生男女間に10項目,大学生男子と短大生女子間の15項目に性差が認められた。それらは,「授業」「友人関係」「評価」「勉学」「将来の見通し」等の領域の項目であり,若干の項目を除いて,大部分の項目の女子の得点は,男子のそれを上回っていた。(3)充実感テストの36項目中の平均得点の上位と下位についてみると,上位には「授業の見通し」と「授業」,下位には,「評価」と「教師」に関する項目が多く選択された。(4)充実感テストと達成動機,意欲減退度との間にはそれぞれ,.164,-.356の相関係数が得られた。検定の結果,達成動機との間には有意差はなかったが,意欲減退度との間には,1%以下の水準で,有意差が認められた。すなわち,充実感と意欲減退度は逆相関の関係があることが判明した。(5)大学生123人(男子77人,女子46人)に対して,学生生活における充実感の度合いを5段階に評定させ,その選択理由を自由記述させた。検定の結果(χ^2=7.858)で,5%の有意水準に僅かに達しなかったが,大体の傾向は推察できた。最も多く選択されたのは「充実感をやや感ずる」(41.4%)で,ついで「充実感をあまり感じない(30.0%)であり,この2つで,70%に達した。以下「どちらでもない」(13.0%),「充実感を非常に感ずる」(12.1%),「充実感を全く感じない」(3.2%)であった。選択理由を見ると,肯定的選択では,「全体としていま一つ充実感を感じないので,やや感ずるを選択した」「クラブ,サークルの人間関係」「授業」等が最も多い選択理由であった。否定的選択では,「目的意識の欠如」「空虚感」といった所謂,自我同一性の危機ないし拡散の現象を示すと思われるものが,選択理由のほぼ半数に達した。(6)充実感に関する自由記述の質問紙の項目12「充実感の有無」と項目10,11,13との関連を見ると,男子では項目11,女子では3項目のすべてに5%以下の危険率で有意差が認められた。これらの項目は,自我同一性の諸側面を表わす項目であり,従って自我同一性の確立は,充実感の基礎あるいは前提条件と考えられる。研究III,IVでは,文章完成法の質問紙を中心に検討をすすめた。研究IIIの被験者は大学生134人,研究IVの被験者は短大生女子66人であった。結果は,以下のとおりであった。(7)文章完成法に対する反応が最も高かったのは大学の友人に関するものであり,友人関係が学生生活の充実感についての大きな条件である。また,学生の充実感と教師認知との関係が課題となる。(8)Likert法と文章完成法との対比においても,学生生活における充実感と,自己,大学,友人に対する認知との関連性が明らかになった。(9)学生の充実感への援助のための若干のモデルを指摘した。
- 駒澤大学の論文
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