北海道沿岸のアザラシ類におけるToxoplasma gondiiおよびNeospora caninum感染に関する血清疫学調査(寄生虫病学)

概要

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北海道沿岸のアザラシ類において,Toxoplasma gondiiおよびNeospora caninum感染に関する血清疫学調査を行った.1998年から2006年の間に,納沙布,厚岸,襟裳で322個体のゼニガタアザラシから,納沙布,襟裳,焼尻島,浜益,積丹で46個体のゴマフアザラシから,納沙布で4個体のクラカケアザラシと1個体のアゴヒゲアザラシから血清を採取した.組み替え抗原を用いたELISAによって,2005年に納沙布で採取されたゼニガタアザラシ血清の4%から抗T.gondii抗体が検出された.抗N.caninum抗体は2003年(保有率:2%),2004年(5%),2005年(10%)に納沙布で採取されたゼニガタアザラシ血清,2004年の納沙布のゴマフアザラシ血清(11%),2005年の厚岸のゼニガタアザラシ血清(8%),および2005年の襟裳のゴマフアザラシ血清(25%)から検出された.このことより,北海道のアザラシ類において,T.gondiiおよびN.caninumの散発的な感染が示唆された.2005年の抗T.gondii抗体陽性個体のうち2個体が,抗N.caninum抗体陽性個体のうち3個体が移行抗体は消失していると考えられる幼獣であり,感染が近年も起きていることが示唆された.アザラシ類でのT.gondii,N.caninum感染は,陸上から海洋への原虫による汚染を示唆する.
社団法人日本獣医学会の論文
2007-04-25