北海道沿岸のゼニガタアザラシ(Phoca vitulina stejnegeri)のインフルエンザAウイルス感染に関する血清学的調査(ウイルス学)
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概要
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ゼニガタアザラシの保護管理に役立てることを目的として,北海道の太平洋沿岸に生息する野生ゼニガタアザラシの,インフルエンザAウイルス感染に関する血清学的調査を行った.1998年から2005年にかけて,納沙布で231個体,厚岸で16個体,襟裳で75個体のサンプル血清が採取された.ELISAでは,納沙布のサンプルからのみ,インフルエンザAウイルスに対する抗体が検出された.抗体保有率は98年が11%(1/9),03年が3%(2/66),04年が12%(7/59),05年が6%(5/77)であり,散発的な感染の存在が示された.いずれの年にも,幼獣からの抗体の検出があったため,少なくとも90年代の終盤から近年まで,感染が繰り返されていると考えられた.HI検査によると,ELISA陽性であった15サンプルのうち,10サンプルからH3亜型に対する抗体が,2サンプルからH6亜型に対する抗体が検出された.H6亜型に対して陽性であった2サンプルはH3亜型に対しても陽性であり,この2個体はH3とH6亜型の両方に感染したと考えられる.H6亜型に対する抗体がアザラシ類で確認されたのは,本報告が初めてである.H6亜型はこれまで鳥類からのみ分離されているが,遺伝学的研究では哺乳類に感染する可能性が示唆されている.今後,ウイルス検出による確定診断を試みたい.
- 社団法人日本獣医学会の論文
- 2007-03-25
著者
-
迫田 義博
北海道大学大学院獣医学研究科微生物学教室
-
喜田 宏
北海道大学大学院獣医学研究科微生物学教室
-
鈴木 正嗣
北海道大学大学院獣医学研究科
-
小林 万里
東京農業大学生物産業学部アクアバイオ学科
-
喜田 宏
北大・獣医微生物
-
渡邊 有希子
猛禽類医学研究所
-
鈴木 正嗣
兵庫県森林動物研究センター
-
鈴木 正嗣
北海道大学大学院獣医学研究科生態学教室
-
鈴木 正嗣
北大 歯
-
鈴木 正嗣
北海道大学・歯学部・第1解剖学講座
-
藤井 啓
北海道大学大学院獣医学研究科生態学教室
-
角本 千治
(有)Eco Friends
-
齋藤 幸子
帯広畜産大学獣医学科解剖学教室
-
刈屋 達也
帯広畜産大学原虫病研究センター
-
喜田 宏
北海道大学大学院獣医学研究科・人獣共通感染症リサーチセンター
-
渡辺 有希子
猛禽類医学研究所
-
喜田 宏
北海道大学 大学院獣医学研究科
-
小林 万里
北の海の動物センター
-
Suzuki M
北海道大学大学院獣医学研究科生態学教室
-
鈴木 正嗣
北海道大学歯学部
-
迫田 義博
北海道大学大学院 獣医学研究科
-
迫田 義博
(独)動物衛生研究所海外病部:北海道大学大学院獣医学研究科微生物学教室
-
Sakoda Yoshihiro
Department Of Disease Control Graduate School Of Veterinary Medicine Hokkaido University
-
角本 千治
特定非営利活動法人北の海の動物センター
-
Suzuki Masatsugu
Laboratory Of Wildlife Biology Graduate School Of Veterinary Medicine Hokkaido University
-
齋藤 幸子
帯広畜産大学獣医学科基礎獣医学講座解剖学研究室
-
刈屋 達也
ひれあし研究会
-
藤井 啓
ひれあし研究会
-
Suzuki Masatsugu
Laboratory Of Wildlife Biology The Graduate School Of Veterinary Medicine Hokkaido University
-
Kobayashi Mari
Laboratory Of Wildlife Biology Department Of Environmental Veterinary Sciences Graduate School Of Ve
-
Watanabe Yukiko
Department Of Veterinary Anatomy Obihiro University
-
鈴木 正嗣
岐阜大学・応用生物科学部
-
藤井 啓
北海道大学大学院 獣医学研究科
-
小林 万里
東京農業大学 生物産業学部 アクアバイオ学科
-
SUZUKI Masatsugu
Department of Oral Anatomy I, School of Dentistry, Hokkaido University
-
小林 万里
東京農業大学
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