海棲動物から考える多様性保全(<特集>国策としての生物多様性「新・生物多様性国家戦略」に学ぶ)
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概要
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日本は,自然特性の異なる4つの海に囲まれ,列島が南北に長く広がって大陸棚が発達し,加えて海底環境が複雑であることも相まって,生物生産力が非常に高い。このことがこれまでの沿岸漁業に貢献しできたが,現在ではかつての好漁場が疲弊し,漁獲量も頭打ちになっている。そのため,沿岸域は著しく荒廃し,生物多楡|生の低下を招いている。一方,日本の国土の面積は世界で60番目であるが,200海里(370.4km)排他的経済水域(EEZ)の面積を含めると世界で第11位であり,EEZそのものは世界で第6位の海の大国である。NPO法人北の海の動物センターでは,1999年から北方四島海域一帯の鯨類と海獣類(トド・アザラシ類・ラッコ)・海鳥類および海洋環境について,「ビザなし専門家交流」の枠を用いて,四島側専門家と共に調査を行ってきた。 2002年は海上調査に陸上(択捉島)動植物相の調査を加えた結果,陸上には莫大な海の生物資源を自ら持ち込むサケ科魚類(河川の魚)が高密度に自然産卵しており,それを主な餌資源とするヒゲマは体サイズが大きく生息密度も高いことが明らかになった。海上と同様,陸上にも原生的生態系が維持されており,それは海と深い繋がりがあることがわかってきた。「北方四島」という生物多様性が保全されている地域の原生的生態系について,そこに生息する動物を例に挙げながら,海の国,日本のこれからの海の多様性保全のあり方を考えて行きたい。
- 日本野生動物医学会の論文
著者
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小林 万里
東京農業大学生物産業学部アクアバイオ学科
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小林 万里
北の海の動物センター
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小林 万里
日本学術振興会・特別研究員(PD)NPO法人北の海の動物センター
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Kobayashi Mari
Laboratory Of Wildlife Biology Department Of Environmental Veterinary Sciences Graduate School Of Ve
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