バイカルアザラシ(Phoca sibirica)の咀嚼筋に関する機能形態学的検討
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
バイカルアザラシ(Phoca sibirica)は, 透明度の高いバイカル湖で視覚に依存して生活していることから, 眼球が大きく発達し, 頭蓋においては眼窩の拡大が著しい, といわれている.拡大した眼窩が咀嚼筋に及ぼす機能形態学的影響を明らかにするため, 咀嚼筋群の走行を肉眼解剖学的に観察した.また, 同種の頭骨を近縁のワモンアザラシ(Phoca hispida)のものと比較し, 2種間で咀嚼筋の付着と発達が, どのように異なっているかを比較検討した.バイカルアザラシは, 拡大した頬骨弓と眼窩を利用して, 咬筋と側頭筋の付着部位を広く確保し, この二つの筋を大きく発達させていた.一方で, 顎二腹筋に関しては, 起始部となる聴胞付近の骨学的発達が悪く, 筋肉自体も小さかった.この特徴は, 側頭骨の聴胞領域を大きく発達させるワモンアザラシと対照的だった.バイカルアザラシにおいて, 機能形態学に眼球の大型化が示唆されてきたが, 同時にそれは, 眼窩を付着部とする同種の咀嚼筋群の走行に大きな影響を与えていることが明らかとなった.今後, 本結果をもとに, バイカルアザラシとワモンアザラシの咀嚼運動機能に関する, 比較形態学的議論の進展が期待される.
著者
-
林 良博
東京大学大学院農学生命科学研究科国際動物資源科学研究室
-
遠藤 秀紀
国立科学博物館動物研究部
-
天野 雅男
東京大学海洋研究所国際沿岸海洋研究センター
-
遠藤 秀紀
京都大学霊長類研究所
-
宮崎 信之
東京大学海洋研究所大槌臨海研究センター
-
林 良博
東京大学大学院農学生命科学研究科
-
林 良博
東京大学 獣医解剖
-
佐々木 浩之
北海道大学大学院水産学研究科北洋水産研究施設海洋生態学部門
-
天野 雅男
京都大学理学部
-
宮崎 信之
東大海洋研
-
宮崎 信之
東京大学海洋研究所
-
Petrov Evangy
ロシア科学アカデミー湖沼学研究所
-
天野 雅男
帝京科学大学アニマルサイエンス学科
-
天野 雅男
東京大学海洋研究所大槌臨海研究センター
-
Amano M
International Coastal Research Center Ocean Research Institute The University Of Tokyo
-
Amano M
Otsuchi Marine Research Center Ocean Research Institute The University Of Tokyo
-
Amano Masao
Otsuchi Marine Research Center Ocean Research Institute The University Of Tokyo
-
Amano Masao
Otsuchi Marine Research Center Ocean Research Institute University Of Tokyo Otsuchi
-
天野 雅男
京都大学・理学部・動物学教室
-
宮崎 信之
東大 海洋研
-
Hayashi Yoshihiro
Department Of Veterinary Anatomy Graduate School Of Agricultural And Life Sciences The University Of
-
Amano Masao
Faculty Of Fisheries Nagasaki University
関連論文
- スンクス精索の形態学的特徴,特に精巣外ライディッヒ細胞
- 愛媛県および高知県産ニホンカワウソの骨計測学的研究
- エストラジオール-3-ベンゾエートの成熟ラットへの投与はテストステロン産生に関わる精巣内ステロイド合成酵素遺伝子の発現を抑制する(臨床繁殖学)
- インターフェロンγおよびインターロイキン12の前処理によりマクロファージはリーシュマニア原虫感染初期に抵抗性を示す(寄生虫病学)
- タイの常緑乾燥林におけるセキショクヤケイの行動と生息密度
- 皇居におけるアブラコウモリのねぐらと採餌場所
- 八丈島産コキクガシラコウモリ(Rhinolophus cornutus)の頭骨に関する骨計測学的検討
- 〈座談会〉民俗生物学は何を目指すか--生き物文化誌学会の発足にあたって (特集 検証中生代の東アジアで何がおこったか--化石が語るジュラ紀・白亜紀の世界像)
- ジャワマメジカ(Tragulus javanicus)の頭蓋および下顎骨の計測学的研究
- ニホンオオカミの頭骨の骨計測およびCTスキャンによる検討
- 自由集会記録・博物館あるいは相当施設での哺乳類標本の収蔵保管とその活用に向けて
- エゾヤチネズミの肺静脈と前大静脈に分布する心筋組織
- ジャワオオコウモリおよびコキクガシラコウモリの精上皮周期 (解剖学)
- ツパイ類(登攀類)における頭蓋形態のプロポーション解析とクラスター分析
- ツパイ類(登攀類)における種々の行動生態に対する頭蓋の形態学的適応(解剖学)
- 赤坂御用地に移入されたタヌキの病理解剖学的検討
- 哺乳類の生殖腺の性分化 : SryからMis/テストステロン分泌まで
- かたちの学校(2)
- かたちの学校
- スナメリの遺残骨盤骨と周囲構造に関する比較解剖学的研究(解剖学)
- 哺乳類の毛皮標本からのDNA抽出ならびに機能遺伝子の回収に関する研究
- インドサイ(Rhinoceros unicornis)の精巣に関する形態学的検討
- アジアゾウ (Elephas maximus) の心筋細胞に関する微細形態学的検討
- マウス胎仔生殖腺におけるαvβ3および αvβ5 integrin mRNA の発現パターンについて
- 哺乳類分類における高次群の和名について(系統分類学)
- ニホンイノシシ(Sus scrofa leucomystax)の下顎骨形態の地理的変異
- リュウキュウイノシシ(Sus scrofa riukiuanus)の下顎骨に関する多変量解析
- リュウキュウイノシシ (Sus scrofa riukiuanus) の下顎骨に関する島嶼間形態変異
- 赤色野鶏の亜種認識および分布に関する文献学的研究
- セキショクヤケイの亜種認識および分布に関する文献学的研究
- 皇居内に移入されたハクビシンとタヌキについて
- コモンツパイ(Tupaia belangeri)の消化管内分泌細胞の免疫組織化学的検索
- アオダイショウ(Elaphe climacophora)精上皮の組織学的研究 : 精祖細胞の同定
- バングラデシュにおける在来豚の飼養と形態の特徴 : 特に西側地域の集団について
- ハムスターを用いた酢酸誘発大腸炎に対する好中球エラスターゼ阻害剤(ONO-6818)の作用(薬理学)
- シリアンハムスターを用いた酢酸誘発大腸炎モデルにおける潰瘍形成と好中球エラスターゼ活性の上昇(実験動物学)
- ニワトリ胚子の精巣索形成におけるデスミンとフィブロネクチンの局在パターンの変化
- 太平洋戦争中の東京都の猛獣処分に関連するアジアゾウの遺体について
- 短日日照によるハムスター精巣におけるSmad2・Smad3遺伝子の発現の影響
- マウスSmad3のクローニングとその発現部位の解析
- チンパンジーの遺体を用いた第一中手骨内転運動のCT断層像観察(解剖学)
- 滅亡の「プランA」ではなく, 存続の「プランB」を選択する
- 短日点灯条件下ゴールデンハムスター精巣において Smad2 と Smad3 は精母細胞の核内へ移行する
- DBA/2雌マウスの腎臓の形態における発情周期の影響
- 不活化狂犬病ウイルスの経鼻免疫による狂犬病発症防御免疫誘導
- 東京大学農学生命科学研究科に保存されているニホンオオカミ (Canis lupus hodophilax Temminck) 剥製標本から回収したアメロゲニン遺伝子(AMELX)エクソンDNAのクローニングとヌクレオチド配列の決定について
- マウス未分化生殖原基の器官培養による精巣、卵巣への分化誘導
- DBA/2Cr雌マウスの腎尿細管における細胞質顆粒の検出および刷子縁の染色性, 各種固定法と染色法の比較(短報)(解剖学)
- ヒミズ (Urotrichus talpoides) の精巣組織におけるレクチン反応性の検討
- ヒミズ精子発生周期
- 特別座談会 今さらフィラリアされどフィラリアこれからのフィラリア予防の展望
- マウス由来抗原とFcとの融合タンパク質をウイルス粒子表面に持つオーエスキー病ウイルスは自己抗原に反応する有害な抗体を産生しない(ウイルス学)
- マウス免疫グロブリンG1のFc領域をもつキメラ蛋白の発現とその免疫学的性状(免疫学)
- フタコブラクダ(Camelus Bactrianus)の卵巣,卵管,子宮角,子宮体および子宮頸の組織像
- ガンジスカワイルカ(Platanista gangetica)の気管と気管支に関するMRIを用いた解剖学的検討
- パネルディスカッション
- イヌ属3種の頭蓋と毛皮におけるサイズの関係
- 前精子発生期におけるマウス雄性生殖細胞(Gonocyte)のレクチン結合パターンの変化
- バイカルアザラシ(Phoca sibirica)の咀嚼筋に関する機能形態学的検討
- 馬の耳管憩室(喉嚢)における各種免疫グロブリンのアイソタイプおよびサブアイソタイプの分布(短報)
- タイ南部ハジャイ地域における2タイプのコモンツパイの同所的分布とその形態学的認識(短報)
- Dirofilaria immitis, Brugia malayiおよびBrugia pahangiにおけるSL1リーダー転写領域を囲む塩基配列の性状 (短報)
- クロオオリスの頭蓋の大きさと形状に関する地理的変異の検討(解剖学)
- クロオオリスの頭蓋の大きさと形状に関する地理的変異の検討
- ハイガシラリス頭蓋の地理的および機能形態学的変位(解剖学)
- ホオアカカオナガリスの頭蓋の地理的変異とその機能形態的意義(解剖学)
- チンパンジーの泌乳期乳腺の形態学的検討(解剖学)
- ジャイアントパンダにおける前腕筋群の機能形態学的検討(解剖学)
- 座談会 人間は動物とどのように関わるのか--大量に殺されてゆく家畜、ペットに依存する社会を背景に
- パネルディスカッション
- クラ地峡の南北から得られたコモンツパイ頭骨の骨計測学的解析
- モノクローナル抗体TSd-1はコモンツパイ(Tupaia glis)の伸長型および成熟精子細胞に特異的である
- イヌインターロイキン12遺伝子の大腸菌及び昆虫細胞における発現
- 犬糸状虫感染の免疫学的予防
- 生物多様性と日本の農林水産業
- シマハイエナ (Hyena hyena) の膵臓に関する肉眼解剖学的および組織学的検討
- ハムスター精巣におけるmitochondrial capsule selenoprotein mRNAの発現パターン
- ゴールデンハムスターにおけるmitochondrial capsule selenoprotein遺伝子のクローニング及び発想
- 性成熟期以降のマウス精巣におけるmitochondrial capsule selenoprotein mRNAの発現パターン
- 鶏の形態嗜好における日本とタイの多面的比較感性モデル : —チエンラーイ・沖縄における鶏形態に対する嗜好調査に基づく—
- 農業農村工学会に期待する
- 国立大学法人化と演習林の在り方について
- 無線LAN位置システムの放し飼いニワトリとホロホロチョウの軌跡追跡への適用可能性
- アジアゾウ (Elephas maximus) の鼻部・上唇部における骨格筋構築
- 皇居産アズマモグラ(Mogera imaizumii)における頭骨の形態とミトコンドリアDNAの塩基配列
- フタコブラクダ(Camelus bactrianus)における背側隆起の付着機構に関する解剖学的検討
- 犬のココロに神宿る--盲導犬・介助犬・セラピー犬に学ぶ
- 獣医病理学用語集(改訂第2版) 日本獣医病理学会用語集編集委員会編 学窓社、平成12年(2000年) 定価 本体7,000円+消費税
- 第2特集 大学・研究機関の法人化と研究者の任期付きポスト--日本林学会主催シンポジウム〔含 パネルディスカッション〕
- 提言 肉用牛生産における山口型放牧の役割
- 学会動向 わが国における「ヒトと動物の関係学」からみた『動物の比較法文化』(青木人志著)
- 犬の生き方--好奇心が旺盛で、ひたすら今を生きる愛犬ペンテルとメイレン (犬のいる人生 犬のいる暮らし--全篇書下ろし やすらぎと元気をもたらす73の愛犬物語) -- (特別随想/談話 犬のいる人生)
- ヒトと動物--すてきな関係考
- 婦人公論井戸端会議 教育から介護まで--ペットに捧げる汗と涙
- 婦人公論井戸端会議 犬のいない世界なんて
- 都市のなかでのヒトと生きものの関係学 (特集 民話と生きものの住まう環境づくり)
- 生物多様性は難しくない (特集 生物多様性)
- 人と動物の共存を目指して
- 闘鶏用を含む直立型ニワトリ品種における筋骨格系の機能形態学的特質
- チンパンジーの泌乳期乳腺の形態学的検討