大学生はいかに力のプリコンセプションを変容させるか
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概要
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本研究の目的は,大学生の力のプリコンセプションを変容させる教授ストラテジーを検討し,プリコンセプションを科学的概念へ変容していくプロセスを明らかにすることである。実験セッションでは,事前テストにより抽出された力のプリコンセプションをもつ82名に,「つり合い教授(易課題)」と「投げ上げ教授(難課題)」の2種の教授が与えられた。事後テストの結果,両課題において,"現象の原因となる力","動きをもたらす力","仕事をする力"のプリコンセプションの変容が認められた。そこで,教授的働きかけを与えられて個人内にどのような心的操作がもたらされたのかをプロトコルから詳細に分析した結果,以下のことが明らかになった。1)易課題が正答できるようになった者の多くは,つり合い教授の認知的葛藤生起情報により,「当惑」がひきおこされた。一方,難課題が正答できるようになった者の多くは,投げ上げ教授の認知的葛藤生起情報により,「混乱」がひきおこされた。2)難課題の認知的葛藤を解消するためには,a)プリコンセプションでは説明不可能な具体的事例を解釈するための枠組みとして,科学的概念が受容される方略だけでは十分な効果はなく,b)プリコンセプションと科学的概念が整合的に結びつけられる方略が有効となることが示唆された。3)易課題が正答できるようになった者の多くは,認知的葛藤解消情報により「記憶の再生・転移」を感じ取ることで,また難課題が正答できるようになった者の多くは,認知的葛藤解消情報により「驚き」を感じ取ることで,知的好奇心が活性化された。
- 日本発達心理学会の論文
- 2004-08-20
著者
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