古代ノロシ通信路の探索
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概要
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水稲農耕が定着した弥生時代の集落の多くは、水利に恵まれた沖積平野などに営まれた。ところが、中期から後期にかけて西日本を中心に標高100メートルを越える高所にも「高地性集落遺跡」と呼ばれる集落跡が発見されている。水稲農耕を基盤にした生活を行うには不便な場所に住居を構える理由について、焼畑説、洪水回避説、祭祀場説、防御軍事施設説など諸説が出されている。これらの説のうち軍事通信用のノロシ場とする説が有力と考えられている。高地性集落遺跡がノロシ通信施設であったことを検証するために、考古学者は遺跡に足を運び見通し状況を確認する作業を行った。また、実際にノロシを上げて通信実験も行われた。これらの方法による確認作業は、多くの労力を要し、確認できる遺跡数もおのずと限られる。近年、考古学の資料の収・集・管理・応用には、コンピュータが有効に利用されるようになり、従来の手作業では扱いにくい情報も容易に活用できるようになった。そのひとつに3次元地理情報の利用が挙げられる。3次元地理情報は、遺跡の意味や相互関係を考える上で極めて重要である。高地性集落遺跡間でノロシ通信が可能であったかどうかは、3次元地理情報を用いることで検証できると考えられる。検証は、平面位置情報とその位置の標高から対象遺跡相互間の見通し可能性をすべて判定するものである。その見通し可能な遺跡間に即、古代ノロシ通信路が存在したかどうかは、さらに検討を要すると思われる。本稿では、検証実験の基礎となるデータおよび実験の手順について述べる。
- 1993-03-01
著者
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