林木の変異に関する研究(III) : クマスギと他のさし木スギ系統間の交雑親和性, F_1幼苗の生長およびクマスギで検出された2個の単一劣性遺伝子について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
素焼植木鉢(径30cm)に2本植えとしたクマスギを雌親として, さし木スギ6系統および実生スギ1系統(クローン)の花粉をガラス室内で授粉し, 交雑親和性のちがい, F_1幼苗の伸びのちがいの調査およびクマスギの自殖種子で葉緑素変異に関する劣性遺伝子の検出をはかった。成熟球果率について花粉親間でとくに大きな相違はみられなかったが, 球果あたりの実粒重および1,000粒重の低下は, 種子の発芽率で判定した交雑和合性の低下とみなされる。自殖種子の発芽率は約1%であったが, ウラセバル花粉親区でもほぼ同じ発芽率をしめし, 交雑親和性が低かった。オビアカ, クモトオシ, イワオスギ, C-1の各花粉親区の発芽率は約35%で交雑親和性が高く, サンプスギ, アヤスギの花粉親はこれらの中間の交雑親和性があった。発芽試験用の木箱(0.55×0.40×0.25(m^3))内での幼苗の生長は生存密度(40cm播種溝, 100粒播種)とはほとんど関係はなかったが, 花粉親により大きなちがいがあった。とくに, イワオスギ, サンプスギ, C-1を花粉親とした場合の幼苗の生長がよく, これらの交配組合せでは平均発芽日数, 50%発芽日数も短い傾向を示した。また, 盛岡, 水戸, 大宮で通常の方法による苗畑育苗の結果とそれぞれ有意な相関があった。このことはこれらの幼苗の苗高生長に関するかぎり, 各地の気候, 土壌などの諸要因と特殊な交互作用のないことを示すものであろう。クマスギで淡緑色子葉苗(完全致死)および白初生葉苗(不完全致死)を生ずる単一劣性遺伝子がそれぞれ検出されたが, 淡緑色子葉苗が発芽初期に枯死するため, 9(正常苗) : 3(白初生葉苗) : 4(淡緑色子葉苗)の分離比を示した。すでに劣性遺伝が証明されているスギ個体(G-5)およびクモトオシの淡緑色苗を生ずる劣性遺伝子とクマスギのそれとはいずれも別の遺伝子であることが確認された。
- 日本森林学会の論文
- 1967-10-25
著者
-
大庭 喜八郎
筑波大学農林学系
-
村井 正文
森林総合研究所
-
斉藤 幹夫
農林省林業試験場
-
大庭 喜八郎
農林省放射線育種場
-
渡辺 操
農林省東北林木育種場
-
野口 常介
農林省東北林木育種場
-
杉村 義一
農林省関西林木育種場
-
村井 正文
九州大学農学部
-
杉村 義一
農林省関東林木育種場
-
斉藤 幹夫
農林省関東林木育種場
-
岡本 敬三
農林省関東林木育種場
-
渡辺 操
農林省 東北林木育種場
-
渡辺 操
農林省林業試験場育種科
-
野口 常介
東北林木育種場
-
大庭 喜八郎
林業試験場
関連論文
- 48 苗畑にて選抜されたカラマツの四倍体
- スギゲノムの遺伝子及びRFLPの連鎖分析におけるアイソザイム遺伝子座の橋渡し方式に関する研究
- 天然林から選抜されたアカマツ精英樹のアロザイム変異
- アカマツ雌性配偶体のアイソザイム変異の遺伝
- 林木の放射線感受性に関する研究(II) : ガンマー線照射ほ場における緩照射によるハンノキ類, ポプラ類およびカンバ類の苗木の生長と枝変り
- ラクダギリ(Paulownia catalpifolia)の成木の成長点培養による大量増殖
- キリ7種の成長点培養
- Tilia amurensis (アムールシナノキ)の実生幼苗の芽培養による試験管内幼植物体再生とその増殖
- フユボダイジュ成木の腋芽からの試験管内植物体再成
- 420 アカマツに見られる着花結実習性の一例(第77回日本林学会大会講演要旨)
- 動・植物育種における遺伝子工学-2-新しい育種の可能性を求めて
- 猫叉山の標高2,050m地点のスギ天然林の生育状況とアイソザイム分析
- ヒノキChamaecyparis obtusa(SIEB. et ZUcc.)ENDL.の天然林におけるアロザイム変異および人工林選出精英樹との比較
- 茎頂培養によるハカランダ(Jacaranda mimosaefolia D. DON)のマイクロプロパゲーション
- 110. つぎ木操作によるマツ属の耐せき性生長力の検定試験(第75回日本林学会大会講演要旨)
- スギのアスパラギン酸アミノ転移酵素アイソザイムの遺伝
- 人工林から選出されたヒノキ(Chamaecyparis oblusa) 精英樹のアロザイム変異
- ヒノキ(Chamaecyparis obtusa (Sieb. et Zu?.) ENDL.)の栄養系品種,南郷檜のアイソザイム遺伝子型によるクローン分析
- アカマツ精英樹の22アロザイム遺伝子座の遺伝子型
- オオシラビソのアイソザイムの遺伝および3地域の隔離天然林におけるアロザイム変異
- 茨城県内のスギの実生人工林および精英樹群のアロザイム変異
- ヒノキ(Chamaecyparis obtusa)葉組織のアイソザイムの遺伝子分析およびヒノキ天然林2地域のアロザイム変異
- チョウセンゴヨウのアイソザイムの遺伝
- アイソザイム実験法
- イチョウ雌性配偶体のアイソザイム変異の遺伝
- ウメ品種のアイソザイムによる分類方法について
- スギ針葉のパーオキシダーゼアイソザイムの遺伝子分析
- アイソザイムの4遺伝子座の遺伝子型による集植されたオビスギ系14品種, ヤブクグリおよびメアサのさし木品種内クローン数の推定
- スギのアイソザイム遺伝子座と矮性遺伝子座間の連鎖分析および致死遺伝子の検出
- スギのアイソザイム遺伝子4座の遺伝子分析および矮性遺伝子(dw)と夏期白緑葉遺伝子(swl)の連鎖
- 致死遺伝子座と標識遺伝子座,RFLP座およびRAPO座との組換価の計算プログラム (RECLOD 20)
- スギゲノムの遺伝子及びRFLPの連鎖分析におけるアイソザイム遺伝子座の橋渡し方式に関する研究 : 3.致死遺伝子座と標識遺伝子座,RFLP座およびRAPD座との組換価の推定
- スギにおける球果の色の遺伝
- スギ雄花の色の不完全優性遺伝の可能性
- スギの3世代材料を用いたジベレリンによる着花性の遺伝
- 次代検定林間で共通に植栽されていない家系データから精英樹を評価する方法の比較
- 次代検定林間で共通して植栽されていない家系データを含めた地域区分の試み
- カラマツ精英樹の次代検定林の5生長期樹高による育種区の再区分についての解析例
- カラマツ精英樹の5年生次代検定林から推定される樹高の育種効果
- ヨレスギの遺伝およびヨレ遺伝子と白子, ミドリスギの両劣性遺伝子との連鎖
- ヒノキの葉緑素変異個体の遺伝
- クロマツの黄子苗を生ずる劣性遺伝子および自然自殖率の推定
- メアサ, キリシマメアサおよびアオスギのミドリスギ劣性遺伝子
- アカマツの葉緑素変異苗の発生ひん度による自然自殖率の推定および葉緑素変異苗の遺伝
- スギの白子苗および淡緑色苗を生ずる劣性遺伝子
- クマスギの体細胞突然変異の誘起におよぼすガンマー線の照射時期, せん定および内部摘芽の効果
- 温室育苗によるスギの世代促進
- さし木スギ品種および1みしょう個体間の交配によるF_1苗の苗高生長とその遺伝力の変動
- ガンマー線の急照射または緩照射をうけたクモトオシの花粉の交配稔性と苗の生長
- 放射線育種場の他殖性植物交配室の花粉気密度と交配の精度について
- イワオスギの自殖および他殖実生における葉緑素変異苗の発生と苗高生長について
- ガンマー線を急照射したアカマツ花粉の交配稔性
- 林木の変異に関する研究(III) : クマスギと他のさし木スギ系統間の交雑親和性, F_1幼苗の生長およびクマスギで検出された2個の単一劣性遺伝子について
- 6.放射線障害と林木生理 : 林木の生体照射における放射線感受性(第10回林木生理シンポジウム)("異常環境と林木生理")
- 林木の放射線感受性に関する研究(V) : スギの自殖種子, 他殖種子および一つの標識遺伝子をもった種子の放射線感受性のちがいについて
- 林木の放射線感受性に関する研究(IV) : ガンマー線照射ほ場における緩照射のもとでの林木の葉のN, P, KおよびCaの含有率について
- 林木の突然変異に関する研究(1) : 放射線処理により誘発されたスギおよびヒノキの枝変りの切枝状態における^C固定
- 林木の放射線感受性に関する研究(III) : カラマツの生長および葉の細胞分裂におよばすガンマー線緩照射の影響
- 林木の変異に関する研究(II) : 母樹別のスギの幼苗の肥料反応について
- 林木の変異に関する研究(I) : 母樹別産地別のアカマツおよびクロマツ幼苗の肥料反応について
- 林木の放射線感受性に関する研究(I) : ガンマー線照射ほ場におけるアカマツおよびクロマツの花芽の放射線感受性
- クモトオシとオキノヤマスギを両親とした3世代材料による遺伝パラメータの試算
- 情報量規準AICを用いたヨレスギ自殖家系における遺伝子分析の適合度検定
- ヨレスギ自殖家系幼苗におけるバーオキシダーゼアイソザイムの遺伝子分析
- H125 マツノマダラカミキリのエステラーゼアイソザイムパターンの地理的変異(分類学)
- 森林遺伝資源の保全について(昭和60年度林木育種研究談話会) (森林遺伝資源の保全と利用)
- にっぽん育種物語--日本人が育てた生物たち-15-林業樹木
- 林木の育種と遺伝資源 (植物遺伝資源)
- 熱帯林森林樹木の遺伝資源保全のための凍結保存方法 : Cedrela odorata L., Guazuma crinita Mart., と Jacaranda mimosaefolia D. Don.
- 間ノ岳におけるハイマツ群落のクローン構造の推定
- 木炭の水質浄化効果
- 筑波大学農林技術センター集植のツバキ属70品種におけるアイソザイム変異と花形との関係
- 716. 開花結実促進試験(1)(第74回日本林学会大会講演要旨)
- 720.外国産マツ類養苗試験(1)(第72回日本林学会大会)
- ジテルベン炭化水素組成の個体割合に基づくスギ天然林の地理的区分
- セロハン袋によるマツ・スギの花粉採集法
- 亜熱帯産マツ類のマツノザイセンチュウに対する罹病性
- ヒマラヤシーダーの花粉の発芽能力におよぼす熱処理の影響
- 333. 開花結実促進試験(1)(第76回日本林学会大会講演要旨)
- 507.スギ老令木さし木試験(V)(造林)(第71回日本林学会大会)
- 708.スギさし木試験(III)
- 706.ヒノキ産地試験(II)
- 329. スギ老令木さし木試験(IV)
- 121.魚梁瀬スギ天然生老令木の挿木について(第III報)(第65回日本林学会大会)
- 250. スギ産地試験(第I報) : 杉の尾山試験地の毬果の形態(第64回日本林学会大会)(ON THE 64 th MEETING OF THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY)
- 122. ヒノキ産地試験について❲II❳(第63回日本林学会大会講演要旨)
- 107. 魚梁瀬スギ天然生老令木の挿木に就いて(第II報)
- 709.アカマツ接木クローンの着果性について(第72回日本林学会大会)
- スギ, ヒノキの花粉に関する二, 三の実験
- ○人工交配用小袋
- ○スラッシュマツの自殖によるタネの収量と苗畑における成績
- カラマツ林の現存量・生産量調査法
- クモトオシを花粉親としたスギ3家系クローンを用いた苗高と根元直径の反復率
- アカマツ精英樹クローンでの自家受粉によるタネのでき方
- ガンマ線(^Co)照射処理によるアカマツ, クロマツ花粉の発芽試験について
- アカマツ, クロマツ花粉の発芽能力におよぼす温度の影響
- ラクダキリ(Paulownia catalpifolia)組織培養育成シュートの葉片と葉柄からの植物体再生
- 514. 暖帯林土壌の研究(第3報) : 各単位型(土壌種群)における主要樹種の生長経過, 地位および林分生産力について(第75回日本林学会大会講演要旨)
- 513. 暖帯林土壌の研究(第2報) : 各単位型(土壌種群)の理化学的性質上の特徴(第75回日本林学会大会講演要旨)
- 19 林業技術としての育種(林業技術問題(VII))