温室育苗によるスギの世代促進
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概要
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致死の淡緑色苗を生ずる劣性遺伝子について, ヘテロ接合型のスギのクローン(G-5)の後代を, 温室育苗により世代促進試験をおこなった。まず, 1965年, G-5について自殖と他殖とをおこない, 同年12月にこれらの種子を1個の木箱(55cm×30cm×13cm)にまきつけ, ジベレリン処理ができるような大きさになるよう温室内で育苗した。1966年の夏にジベレリン処理をして花芽の誘起をはかり, 1967年の春, これらのF_1後代にG-5の花粉を戻し交配し, 秋に球果を採取した。こうして, 一世代を満2年に短縮した。他殖後代127個体のF_1個体のうち84個体(66.4%)に球果がついた。一方, 自殖による61本のF_1個体のうち36個体(59.0%)に球果がついた。個体あたりの成熟球果数は1個から10個の範囲であり, その平均値は両後代群とも3個をわずかに上回った。自殖後代における平均1,000粒重, 球果あたりの平均実粒数は他殖後代のそれよりも有意に低かった。発芽試験の結果, 自殖後代の平均発芽率は他殖後代のそれより有意に低かった。一方, G-5の自殖種子(1965年)および自殖後代への戻し交配をした種子(1967年)の発芽率は, ともに約27%で同じ程度であった。両後代群で観察されたF_1個体の遺伝子型頻度は次のようであった。他殖後代において, 優性ホモ接合型 : ヘテロ接合型は35 : 27であり, 自殖後代では同じく, 9 : 12であった。これらの分離比は, 1 : 1および1 : 2(ヘテロ型)の期待値にそれぞれよく適合した。ヘテロ接合型のF_1個体へのG-5花粉の戻し交配により, 正常苗 : 淡緑色苗は3 : 1の分離が期待される。しかし, 他殖後代においては淡緑色苗の分離が少なかった。83本のF_1個体から戻し交配によるF_2世代として, 2,000本以上の苗がえられた。世代促進を用いる実際のスギの育種事業においては, 特定の形質, たとえば, 早い生長, 耐病性, 耐凍性にすぐれているほかに, ジベレリン処理により特異的に多量の雌花, 雄花をつける能力および高い交雑和合性, 自家和合性をもつ個体や系統を使用することが重要である。さらに, それぞれの育種目標にかなった早期検定技術の開発が必要である。
- 日本森林学会の論文
- 1971-05-25
著者
-
大庭 喜八郎
筑波大学農林学系
-
村井 正文
森林総合研究所
-
岡田 幸郎
農林省林業試験場
-
村井 正文
農林省林業試験場
-
大庭 喜八郎
農林省農業技術研究所・放射線育種場
-
大庭 喜八郎
林業試験場
-
岡田 幸郎
林試
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