イワオスギの自殖および他殖実生における葉緑素変異苗の発生と苗高生長について
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概要
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1965年と1967年にスギの一栄養系, イワオスギの自殖および他のさし木系統を花粉親とする他殖をおこなった。表-1および表-2に球果と種子の生産, 種子の発芽ならびに検出された葉緑素変異苗の頻度をしめした。1967年の交配では母樹の管理をよくしたので, そこでえられた球果あたり実粒重(mg), 1,000粒重, 発芽率は妥当な値と考えられる。発芽率は20.9〜48.5%にわたり, 花粉親間で約2倍のちがいがみられた。露地での自殖種子の発芽率は約20%であったのに対し, 温室内でのその発芽率は29%であり, 露地では生存力の弱い種子が発芽しないことをしめした。自殖区の苗で, 写真-1にしめした葉緑素変異苗が2.6〜4.6%の発生率で検出された。他殖区の苗でもわずかではあるが, このような変異苗がみられた。現在, この変異苗の遺伝様式は明らかでない。また, 自殖区の苗では他の型の葉緑素変異がみられた。すなわち, これらの変異苗の針葉, 若枝は夏期に白化(白色-黄白色)した。この夏期白化苗は, 塚原(1964)が報告したスギの栄養系, ニンジンバの夏期黄化によく似ている。イワオスギからのこの変異苗をニンジンバ型苗と名づけ, これが1個の劣性遺伝子により遺伝することを証明した。1965年の交配による2年生苗で苗高測定をおこない, その結果を図-1,2,3にしめした。花粉親により平均苗高は大きなちがいがあり, 苗高の遣伝力は0.56と推定された。自殖区と他殖区の苗高の頻度分布はいくらかちがっていた。イワオスギの自殖により生じた正常型苗, ニンジンバ型苗の苗高の頻度分布は左側へひずみをしめし, 分散も大きかった。一方, 他殖区の苗の苗高の頻度分布は, ほぼ左右対称であった。平均苗高と分散, 変異係数との関係を図-3にしめした。自殖区の変異係数は他殖区のそれより, 約50%大きな値をしめした。他殖区の変異係数が小さいことは, 複対立遺伝子による緩衝作用により説明されよう。イワオスギは生長は早いが, 遺伝子型は高いヘテロ性をもつと思われる。イワオスギの自殖により生長に有効な多くの遣伝子を集積した個体群のえられる可能性がある。
- 日本森林学会の論文
- 1969-05-25
著者
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