血中精子不動化抗体の受精阻害作用に関する生殖免疫学的研究
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概要
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原因不明不妊症患者に検出される精子不動化抗体の不妊症発症機序として、精子の頚管内通過障害が知られているが、受精の過程における精子不動化抗体の作用は不明である。今回精子不動化抗体のヒト受精系におよぼす影響を検討する目的で、体外成熟培養させた卵透明帯を用いて精子貫通試験を行った。さらに、その作用機序を解明する目的で、精子のcapacitationにおよぼす影響につき検討を加えた。7例の精子不動化抗体陽性血清および4例の対照血清を用いて精子貫通試験を行った。4例の対照血清と反応させた精子はすべて透明帯貫通性を示したのに対し、7例の精子不動化抗体陽性血清と反応ざせた精子では透明帯貫通性が抑制され、特に6例では完全な阻害作用が示された。このうち1例は両側卵管閉塞にて体外受精を行った患者であるが、患者血清を培養に用いた1回目は2個の成熟卵とも受精せず、膀帯血清を用いた2回目には3個の成熟卵すべてが受精に成功した。さらに精子不動化抗体陽性血清より抽出したIgG分画を用いても同様の阻害効果が認められた。前培養時のみ患者血清と反応させた精子を用いた場合は対照に比べれば抑制されてはいるものの明らかに透明帯貫通性を示したのに対し、前培養後に患者血清を加えた場合には透明帯を貫通した精子は全く認められなかった。今回の検討により精子不動化抗体は受精の第一段階である精子の透明帯への結合および貫通を阻害することにより不妊症を引き起こすという機序のあることが明らかになった。その作用機序としては、capacitation後の精子に対しても阻害作用を示すこと、抗体と反応させた精子でもcapacitationが誘起されることなどから、精子のcapacitationの抑制である可能性は少ないと推論された。
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1986-07-01
著者
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