家兎胎仔肺におけるsurfactantの生合成と分泌に対するnicotineの影響

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喫煙妊婦では, 子宮内胎児発育遅延や早産が多いにもかかわらず, 非喫煙妊婦の早産例に比して, 新生児の呼吸障害が少ないと報告されている. しかし喫煙妊婦の羊水中 lecithin/sphingomyelin比は, 非喫煙妊婦群と差がなかつたとの報告もあり, 胎児肺成熟に及ばす nicotineの影響はまだ不明の点が多い. 本研究では, 胎児肺における surfactantの生合成とその肺胞腔への分泌という二つの視点から, nicotineの影響を検討する目的で妊娠家兎に連続的に nicotineを経口投与し, 妊娠28日目の胎仔肺組織および羊水中のphosphatidylcholine (PC)とphosphatidylglycerol (PG)濃度を測定した. また, 胎仔の慢性的ストレスの指標として, 胎仔血中および羊水中の catecholamine (CAT)についても測定した. Nicotine投与群では, 胎仔体重, 肺湿重量ともに低下し, 肺組織中の総蛋白質量, 総燐脂質量も低下していた. Nicotine投与群の胎仔肺では, surfactantの主成分であるPCとPG濃度が低下しており, PG/PC比も低下していたことから, 肺II型細胞での surfactantの生合成が抑制されていると考えられた. 一方, 羊水中のPCおよびPG濃度は, 両群間に有意差を認めず, PG/PC比としても有意の変化を示さなかつた. また, nicotine投与群では, 胎仔発育遅延を示したが, 胎仔血中のCATは高値を示した. これらの結果より, nicotine投与群では, 胎仔肺II型細胞での surfactant生合成は抑制されるが, 肺胞腔への surfactantの分泌はむしろ促進されており, この分泌促進には, CATによる肺のか受容体の刺激が関与していると考えられた. また, nicotine投与群でも, 羊水中 surfactantの生化学的成熟度は保たれていたことから, nicotine投与により生じたsurfactant生合成の抑制は, 酵素レベルでの抑制ではなく, 燐脂質合成の基質レベルでの量的な抑制であると推測された.
1988-11-01

家兎胎仔肺におけるsurfactantの生合成と分泌に対するnicotineの影響

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