ヒト胎児成熟と羊水中catecholaminesおよびそのMAO代謝物濃度
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概要
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羊水中のcatecholamines(CAT)およびそのmonoamine oxidase(MAO)代謝物は,主として胎児由来であると考えられている.従つて,これら物質の羊水中濃度を測定することにより,胎児の副腎および中枢神経系の成熟を推定し得ると思われる.また,fetal distressに際して反応性に分泌されたCATが羊水中にも反映されている可能性がある.今回我々は,妊娠各時期に採取した羊水中のdopamine(DA),epinephrine(E),norepinephrine(NE),3,4-dihydroxyphenylacetic acid(DOPAC)および3,4-dihydroxyphenylethylglycol(DOPEG)濃度を酵素ァイソトープ法にて測定し,胎児成熟との関連について検討した.また,胎児肺成熟と最もよく相関するとされる羊水中phosphatidylglycerol(PG)濃度も同時に酵素法にて測定し,各CAT濃度との相関についても検討し,以下の結果を得た. (1)fetal distressが存在しなかつたと考えられる症例では,妊娠週数と共にCATが増加した.特にDA,NEおよびDOPEGが,妊娠36週頃から急増した. (2)重症妊娠中毒症や糖尿病合併妊娠などで,latent fetal distressが存在したと考えられる症例では,36週以前においてもDA,E,NEおよびDOPEGの高値が認められた. (3)妊娠37週未満の羊水中PG濃度は,DA(p<0.005),E(p<0.02),NE(p<0.05),DOPEG(p<0.05)濃度と有意の相関性を示したが,正期産ではこれらの相関は認められなかつた.このことは,胎児肺にβ-receptorが存在することや,β-stimulant投与によつて胎児肺成熟が促進されることなどと考え合わせると,latent fetal distressの際にみられる胎児肺成熟の促進にCATの分泌増加が密接に関与している可能性を示唆するものと考えられる. (4)逆に,羊水中のPGやCATの動態を知ることは,ハイリスク妊娠に際して,fetal distressの程度を推定できると共に分娩時期および方法の適切な決定に有用な指標となり得ると考えられた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1985-12-01
著者
-
伴 千秋
国立病院機構大阪医療センター
-
佐川 典正
京都大学医学部婦人科学産科学教室
-
森 崇英
京都大学医学部婦人科学産科学教室
-
伴 千秋
京都大
-
宗重 彰
京都大
-
川口 周利
京都大学医学部婦人科学産科学教室
-
伴 千秋
京都大学医学部婦人科学産科学教室
-
岡崎 武志
京都大学医学部婦人科学産科教室
-
宗重 彰
京都大学医学部婦人科学産科教室
-
川口 周利
北野病院
-
伴 千秋
京都大学 小児科
-
岡崎 武志
和歌山県立医科大学紀北分院産婦人科
-
岡崎 武志
京都大学医学部婦人科学産科学教室
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