ヒト羊水中phosphatidylglycerolの特異的定量法ならびに出生前診断法としての意義
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概要
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我々は今回羊水から総脂肪を抽出し,5種類の酵素の組合せによって,phosphatidylglycerol(PG)およびphosphatidylchoHne(PC)をそれぞれ特異的に定量する方法を開発し,正常妊婦275例の羊水中のPGおよびPC量を測定し,一部の羊水では同時にdisaturated phosphatidylcholine(DS-PC)の定量,L/S比測定,shake testをも行なった.これら各検査法による予測値を出生後の児の肺機能と比較し,臨床応用についての基礎的検討を行なった.(1)羊水より総脂肪を抽出し,silicic acid columnによってPGおよびPCを含む分画を精製した.phospholipaseDによってPCから遊離したcholineおよびPGから遊離したglycerolを,それぞれcholine oxidaseならびにglycerokinase,L-α-glycerophosphate oxidaseを用い,PCおよびPGを特異的に定量した.全操作に要する時間は約3時間であった.(2)PCおよびPGは本酵素法によって2nmolesまで定量可能であり,羊水中にPGが出現する初期(妊娠30〜34週)の微量定量が可能であった.(3)羊水中に混入する可能性のあるbilirubinならびにcardiolipinは,本酵素法によるPGとPCの測定結果にはほとんど影響を与えなかった.(4)羊水中のPG量は,出生後児の呼吸に異常の認められなかった242例については,6例を除いて全て成熟値(0.36μmoles/dl以上)を示し,respiratory distress syndrome(RDS)を発症した症例では大部分(33例中30例;91%)が成熟値以下であった.また,従来の羊水分析法と比較して,PG定量法は胎児の肺成熟についてより一層正確な情報を提供した.(5)羊水中のPC量の胎齢に伴う増加曲線は,L/S比のそれと極めてよく一致していた.PC定量による判定は,DS-PC定量やL/S比測定による判定成績とほとんど差が認められなかった.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1985-03-01
著者
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佐川 典正
京都大学医学部婦人科学産科学教室
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森 崇英
京都大学医学部婦人科学産科学教室
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宗重 彰
京都大
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岡崎 武志
京都大学医学部婦人科学産科教室
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宗重 彰
京都大学医学部婦人科学産科教室
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岡崎 武志
和歌山県立医科大学紀北分院産婦人科
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岡崎 武志
京都大学医学部婦人科学産科学教室
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