子宮頚管粘液中のCA125, CEA, CA19-9含有量 : 月経周期および頚部炎症性疾患における検討
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
子宮頚管腺上皮より腫瘍関連抗原であるCA125が分泌されているが, これが月経周期の変化や頚管の炎症性疾患の存在により影響を受けるか否かは明らかでない. したがつて, 今回は, とくに婦人科的異常を認めない月経周期各期の婦人および子宮頚部炎症性疾患を有する婦人の頚管粘液を採取し, そのCA125含有量を測定し検討した. これと同時に, 他の腫瘍関連抗原 CEA (carcinoembryonic antigen), CA19-9について, その頚管粘液中含有量も検討した. 婦人科的にとくに異常を認めない婦人 (45例)の頚管粘液中CA125値は102, 200±8,600 (M±S.E.) U/mlであつた. 卵胞期のCA125値 (25例 : 126,100±12,400U/ml)は, 黄体期のそれ(11例 : 53,000±4,200U/ml) に比し有意に高値を示した. 一方, 頚管粘液中CEA値は 3,400±550ng/ml, CA19-9値は 3,470±500U/mlで, いずれも月経周期による差異を認めなかつた. 頚管ポリープを有する婦人(15例)の頚管粘液中CA125値は, 健常婦人に比し有意差を認めなかつたが, 萎縮性腔炎の婦人 (12例) のそれは有意に低値を示し, 一方, 頚管粘液中CEA, CA19-9値は頚管ポリープおよび腔炎の婦人いずれも健常婦人に比し有意に高値を示した. さらに頚管ポリープの3症例および萎縮性膣炎の6症例において, ポリープ切除前後およびestriol腔坐薬投与前後の頚管粘液中CA125, CEA, CA19-9値を測定したところ, いずれもそれぞれの治療後にCEA値またはCA19-9値の低下が認められた. すなわち, 通常の頚管粘液中には腫瘍関連抗原CA125を含む糖蛋白が多量に分泌されており, その頚管粘液中含有量は卵胞期に高値となることが判明し, その産生・分泌が性ステロイドの影響を受けている可能性が示唆された. また, 頚管ポリープや腔炎を有する婦人では, 頚管粘液中のCEA, CA19-9値が上昇していることが多く, これはそれぞれの治療により低下しうることが明らかとなつた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1988-10-01
著者
-
藤井 信吾
京都大学医学部婦人科学産科学教室
-
南部 吉彦
京都桂病院
-
佐川 典正
京都大学医学部婦人科学産科学教室
-
森 崇英
京都大学医学部婦人科学産科学教室
-
小西 郁生
京都大学医学部婦人科学産科学教室
-
小林 史典
京都大学医学部婦人科学産科学教室
-
南部 吉彦
京都大学医学部婦人科学産科学教室
-
野々垣 比路史
京都大学医学部婦人科学産科学教室
-
小林 史典
兵庫県立尼崎病院産婦人科
-
野々垣 比路史
公立豊岡病院
-
小西 郁生
京都大学医学研究科 婦人科学産科学
関連論文
- 553 子宮筋・子宮筋腫は妊娠中の性ステロイド環境で増殖しうるか?
- 527 子宮内膜における性ステロイド受容体発現 : 月経周期における上皮及び間質細胞での発現の相違について
- 354 子宮内膜増殖症と子宮体癌における性ステロイド受容体発現の相違
- 家兎胎仔肺におけるsurfactantの生合成と分泌に対するnicotineの影響
- nicotineの妊娠ヒツジ子宮血行に対する影響とPGI_2誘導体(OP-41483)の拮抗作用について
- 500 胎盤後血リンパ球の機能について : 末梢血リンパ球との対比において
- 426. 絨毛組織培養上清のIL-2効果増強作用
- ヒト精子受精能検査試薬FAB-25(アクロビーズテスト)の有用性に関する多施設研究
- 妊娠ブタ子宮動脈血管条片の昇圧物質に対する反応性について
- 286 Polycystic Ovary Syndromeに対するbromocriptine療法における臨床成績とホルモン動態の検討
- 討論 (子宮内環境と胎児)
- 討論(妊娠の成立機構 : 胚発生から着床まで)
- 胎児仮死症例における臍帯血中Brain Natriuretic Peptide(BNP)濃度の上昇について
- 重症妊娠中毒症合併妊婦の血漿中におけるBrain Natriuretic Peptide(BNP)濃度について
- 妊娠中毒症の発症機序におけるLupus anticoagulant(LAC)の関与についての臨床的検討
- 妊娠中期の羊水穿刺後に敗血症性ショックから多臓器不全をきたした1症例(英文学術論文(JOGR28巻5号)の概要)
- 妊娠に合併した莢膜細胞腫の酵素組織化学、超徴形態学および内分泌学的検討
- 妊娠各期の母体血清および羊水中における腫瘍関連糖蛋白CA130の濃度ならびにその起源についての検討
- 355 ヒト羊水中腫瘍関連糖蛋白CA125, CA130-22, CA19-9の起源ならびに生物学的意義についての検討
- ヒト胎児成熟と羊水中catecholaminesおよびそのMAO代謝物濃度
- 3)早発思春期 (1.クリニカルカンファランス : 症例から学ぶ)
- lysosome蓄積症により非免疫性胎児腹水を3回連続して反復した1例
- 妊娠初期における母体血中CA130濃度の臨床的意義についての検討 : 正常妊娠, 流産, 胞状奇胎および卵管妊娠における母体血中CA130濃度の比較
- 日本受精着床学会20年の歩み
- 卵巣癌と凝固系異常
- 頸静脈血栓症を伴った卵巣過剰刺激症候群の1例
- インテグリンと生殖内分泌
- 63.原発巣の発見に苦慮した卵巣原発小細胞癌と考えられた一例 : 附属器・卵巣II
- 179 術前高アミラーゼ血症を伴った原発性卵管癌の一例(その他女***2)(第33回日本臨床細胞学会秋期大会)
- 先天性陰唇癒合症の2例
- 9-24.ヒト胚および子宮内膜上皮におけるactivated leukocyte cell adhesion molecule(ALCAM/CD166)の発現(第40群 生殖生理・病理5)(一般演題)
- 7. 婦人科画像診断の特異性 : MRIの特異性 (II. クリニカルカンファランス)
- 当科における卵巣チョコレート嚢胞症例の検討
- 233 培養ヒト黄体化顆粒膜細胞のプロゲステロン産生に対するインターフェロンの抑制作用
- P-208 子宮内膜癌におけるp53異常発現の免疫組織学的検討
- 64 女性生殖器におけるATL-derived factor(ADF)発現の免疫組織学的検討
- 280 卵巣上皮性腫瘍におけるc-erbB-2 proteinおよびepidermal growth factor receptor(EGFR)発現の免疫組織学的検討
- 著明な好酸球浸潤を伴った子宮頚癌の臨床病理学的検討
- 504 子宮内膜および胎盤組織におけるEpidermal Growth Factor Receper(EGFR)とc-erbB-2蛋白発現の免疫組織学的検討
- 292 血中CA125値とCA130値の解離症例の解析に基づく血中CA125遊離機構に関する考察
- 427. normal human early decidual tissueより得られたcell linesの形態学的考察 : 第71群 ***の生理・病理 IV (425〜430)
- 絨毛性疾患の診断,管理におけるヒステロスコピーの意義
- 子宮に発生したmunerian adenoibromaの組織学的検討
- 性ステロイド投与で発生した実験的adenomatoidtumor様腫瘤の組織発生学的考察
- 常位胎盤早期剥離におけるハプトグロビン測定の意義
- 妊娠中期における出生前胎児診断例の検討
- 264 CA 125を含む糖蛋白上の異なる抗原決定基と考えらるCA 130-22の婦人科臓器および腫瘍における免疫組織学的局在
- Leiomyomatos Peritonealis Disseminataの組織学的,内分泌学的検索
- 妊娠個体の昇圧物質に対する反応性と腎および子宮血流量変動ならびにindomethacin投与の影響について
- 7. 婦人科画像診断の特異性 : CTの特異性 (II. クリニカルカンファランス)
- 臍帯ヘルニア17症例の検討
- 妊婦血中ANP,BNP,NOxおよびcGMP濃度について : 正常血圧妊婦と妊娠中毒症合併妊婦の比較(一般演題:ポスター)
- 分娩後重篤な溶血と急性腎不全をきたし、postpartum hemolytic uremic syndrome (HUS) と考えられた重症妊娠中毒症の1症例
- Human menopausal gonadotropin投与下におけるヒト卵胞の性ステロイド生合成機能
- 閉経のバイオロジー
- 手術のコツ : 子宮筋腫, 腹式単純子宮全摘術 (今月の研修テーマ)
- 手術のコツ : 子宮筋腫,筋腫核出術
- (依頼稿) 子宮平滑筋腫瘍の臨床病理 : 筋腫と平滑筋肉腫との境界病変
- 子宮筋腫の発生要因・組織発生起源とその内分泌相関 : 婦人科腫瘍と内分泌相関 : 基礎と臨床
- 実験的leiomyomatosis peritonealis disseminate : 平滑筋様細胞の分化におよぼすprogesteroneの影響について
- 子宮頚癌患者リンパ球のPHA芽球化におよぼすヒト臍帯血漿の影響について
- 妊娠中毒症合併妊娠の母体および臍帯血中 PAF-AH 活性
- 臨床的に見逃されやすい頸癌 "adenoma malignum"
- 73 子宮内膜, 頸管, および卵管におけるEstrogen Receptor及びProgesterone Receptor発現の免疫組織学的検討
- 子宮頚部扁平上皮・頚管腺上皮の分化調節機序の解析に基づく頚癌初期発生過程の研究 (子宮頚部の初期癌ならびにその関連病変)
- 67 子宮頸部扁平上皮の腫瘍化過程におけるATL-derived factor (ADF)の発現とHuman Papillomavirus (HPV) DNAの局在との相関
- 66 子宮頸部扁平上皮の腫瘍化過程におけるEstrogen Receptor及びProgesterone Receptor発現の免疫組織学的検討
- 142 月経周期における血中CA125値の変動 : 正常排卵周期, 黄体機能不全及び無排卵周期の婦人についての検討
- 414 発生学から見たCA125の発現様式に関する再考察
- 301 子宮頸癌初期病変におけるATL-Derived Factor (ADF)の免疫組織学的検討
- 子宮頚管粘液中のCA125, CEA, CA19-9含有量 : 月経周期および頚部炎症性疾患における検討
- 35 子宮筋腫細胞の核分裂像と月経周期について
- 頚管粘液中のCA125, CA19-9, CEA値による子宮頚部腺癌の補助診断法
- 15-5.胎生期の低栄養が成人後の肥満発症の危険因子となる機序の解析 : diet-induced thermogenesis(DIT)の視点から(第70群 胎児・新生児5)(一般演題)
- 13-3.子宮内発育遅延児における成長後のレプチン感受性低下機序および高脂肪食の影響 : 摂食制限によるIUGRマウスモデルを用いた検討(第60群 妊娠・分娩・産褥期12)(一般講演)
- 卵巣腫瘍患者における血清CA125、CEA、AFP、LDH及びLDH isoenzymeの検討 : とくに腫瘍組織型と各腫瘍マーカーの相関について
- 365 子宮内膜症病変及びその周辺腹膜組織における性ステロイド受容体及び抗上皮性抗体Ber-EP4発現の免疫組織学的検討
- P-324 胎生初期女性生殖器の発達過程における性ステロイド受容体およびKi-67発現の検討
- 58 ヒト卵巣におけるestrogen receptor及びprogesterone receptorの免疫組織学的局在の検討
- 外陰のpapillary hidradenomaの組織学的検討
- P-141 子宮腺筋症における異所性内膜組織周辺の平滑筋の増殖能に関する免疫組織学的検討
- P-325 ヒト胎児期の内胚葉上皮下平滑筋と中胚葉由来上皮下の平滑筋の分化時期に関する免疫組織学的検討
- 1. 子宮頸管腺上皮の腫瘍化に伴うCA125, CA19-9, CEAの免疫組織学的局在の変化
- 215. 子宮頸管粘液中のCA 125, CA 19-9, CEA値の動態による頸部腺癌の補助診断法としての有用性
- Estrogenの長期間投与で生じる多発性腹膜下腫瘤の組織学的検討
- 388 子宮筋腫組織のコラーゲン量, コラーゲン合成能, 及びI・III型コラーゲンの局在性について
- 非妊ラット子宮血管構築の鋳型走査電子顕微鏡による観察
- 産婦人科領域におけるレプチンの意義
- ヒト羊水中phosphatidylglycerolの特異的定量法ならびに出生前診断法としての意義
- 塩酸リトドリン使用後に母体血中CPK値の急激な上昇をきたし筋緊張性ジストロフィー症と判明した切迫早産の1例
- 妊娠中期の羊水穿刺後に敗血症性ショックをきたした1症例
- preterm PROM142例の検討
- 末梢血単核球からのIL-8産生に対するhCGの促進作用とその着床への関与
- 当教室における最近10年間のじゅう毛性疾患の治療成績
- 妊娠経過中に増大した卵巣境界悪性腫ようの1例
- 常位胎盤早期剥離の取り扱い 周産期研究部会所属施設へのアンケート調査の報告:―周産期研究部会所属施設へのアンケート調査の報告―
- 妊娠時ヒト末梢血単核球のはい着床浸潤促進について
- 当科における帝王切開術の既往を有する妊婦の分娩様式と母児の臨床経過の検討
- 妊娠に合併した組織学的に予後不良な進行子宮頚癌の3例
- piezo‐micromanipulatorを用いたassisted hatching法のはい着床促進効果に対する影響