妊娠初期における母体血中CA130濃度の臨床的意義についての検討 : 正常妊娠, 流産, 胞状奇胎および卵管妊娠における母体血中CA130濃度の比較
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概要
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腫瘍関連糖蛋白であるCA130は, 婦人科腫瘍のマーカーとして用いられているが, 正常脱落膜組織中および妊婦血中にも高濃度に存在する. 我々は, これまでに正常妊娠経過に伴うCA130の血中濃度変化, ならびに, 分娩後に母体血中に増加するCA130が脱落膜由来であることを明らかにしてきた. 今回は, 妊娠初期の異常妊娠における母体血中のCA130濃度を測定し, その病態との関係ならびに臨床的意義につき検討した. 妊娠初期(妊娠5週から妊娠10週)における, 正常妊娠, 子宮内妊娠の流産, 胞状奇胎および卵管妊娠の症例につき, 母体血中CA130濃度を測定した. 正常妊娠(131±150u/ml, mean±SD, n=13), 流産(197±253u/ml, n=10)および胞状奇胎症例(47±15u/ml, n=3)では高値を示したが, 卵管妊娠症例(28±21u/ml, n=15)では低値を示し, そのうち***出血を伴わない13例(20±6u/ml)では全例非妊婦の正常値(35u/ml以下)の範囲であった. しかし, ***出血を認めた卵管妊娠の2症例(79および74u/ml)では高値を示した. 子宮内妊娠においては母体血中CA130濃度が上昇するが, ***出血を伴わない卵管妊娠では上昇しないこと, 子宮内脱落膜組織中には高濃度のCA130が存在すること, および卵管間質部の脱落膜化は極めて少ないことなどから, 子宮内妊娠において母体血中に増加するCA130は, 胎盤形成過程あるいは流産過程で脱落膜組織および脈管の破壊により, 脱落膜組織中のCA130が母体血中に流入したものと考えられた. さらに, ***出血を認める卵管妊娠症例では血中CA130濃度が上昇することからも, 妊婦血中に上昇するCA130は, 脱落膜組織の破壊を示唆するものと考えられる. また逆に, 妊娠初期に母体血中CA130が上昇しない場合には子宮内に妊卵が存在しない可能性すなわち子宮外妊娠(卵管妊娠)の可能性を示唆し, 血中CA130の測定が, 妊卵着床部位の補助的診断法の一部として有用である可能性が示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1992-11-01
著者
-
星野 達二
神戸市立医療センター中央市民病院
-
藤井 信吾
信州大学医学部産科婦人科学教室
-
藤井 信吾
信州大学医学部産婦人科
-
佐川 典正
京都大学医学部婦人科学産科学教室
-
森 崇英
京都大学医学部婦人科学産科学教室
-
野々垣 真佐史
国立大阪病院
-
島田 逸人
神戸市立中央市民病院
-
山下 正紀
神戸市立中央市民病院産婦人科
-
池内 正憲
神戸市立中央市民病院産婦人科
-
高島 英世
神戸中央市民病院婦人科
-
野々垣 真佐史
兵庫県立尼崎病院産婦人科
-
野々垣 真佐史
神戸市立中央市民病院産婦人科
-
小林 史典
神戸中央市民病院産婦人科
-
朴 京林
神戸中央市民病院産婦人科
-
山下 正紀
神戸中央市民病院産婦人科
-
野々垣 真佐史
神戸中央市民病院産婦人科
-
星野 達二
神戸中央市民病院産婦人科
-
島田 逸人
神戸中央市民病院産婦人科
-
小野 吉行
神戸中央市民病院産婦人科
-
池内 正憲
神戸中央市民病院産婦人科
-
島田 逸人
神戸市立中央市民病院 産婦人科
-
小林 史典
兵庫県立尼崎病院産婦人科
-
小野 吉行
小野レーディースクリニック
-
山下 正紀
神戸市立中央市民病院
-
朴 京林
京都大
-
高島 英世
兵庫県予防医学協会細胞検査室
-
池内 正憲
神戸市立中央病院産婦人科
-
池内 正憲
神戸市中央市民病院
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