PHA刺激に対するヒト末梢リンパ球の幼若化反応におよぼす性ステロイドの影響

概要

論文の詳細を見る
妊娠の成立と維持に関する性ステロイドの免疫生物学的意義を検討する目的から,phytohaemagglutinin (PHA)刺激下におけるヒト末梢リンパ球の幼若化反応におよぼす各種性ステロイドの影響を観察した. 健康成人男女7名の志願者から述べ91回にわたり採取した血液からリンパ球を分離,PHA刺激下に72時間培養後^3H-thymidineを培養系に加えて24時間追加培養し,DNA中への標識化合物の取り込みにおよぼすestrone, estradiol-17β, estriol, testosterone, dehydroepiandrosterone, Δ^4-androstenedione, progesterone, 17α-hydroxyprogesterone,および20α-dihydroprogesteroneの9種のステロイドの影響を10^<-1>から10^4ng/mlの範囲にわたつて検討した.またこれらの性ステロイドがリンパ球に対して細胞毒性的に作用するか否かをtrypan blue dye exclusion法によつて検定した. 1) 9種の性ステロイドのうちprogesteroneと20α-dihydroprogesteroneのみが統計的に有意の抑制効果を示し,他のステロイドは促進的にも抑制的にも作用しなかつた. 2) progesteroneの最少有効濃度は2×10^3ng/mlであり10^4ng/mlに至るまで漸増的な抑制を示しその抑制力はpredonisoloneの1/20以下であつた. 3) 10^4ng/mlの濃度における20α-dihydroprogesteroneの抑制効果は同濃度におけるprogesteroneのそれに比して弱かつた. 4) 何れの性ステロイドにもリンパ球に対する細胞毒性効果は認められなかつた. 以上の検討成績とヒト胎盤におけるprogesteroneの局所濃度が2〜6×10^3ng/mlであることから,progesteroneはリンパ球に対する非特異的な抑制因子の1つとして,それが産性分泌された局所においてリンパ球に対する細胞毒性を発揮することなく母体細胞性免疫能の低下に関与していることが示唆された.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1976-11-01

PHA刺激に対するヒト末梢リンパ球の幼若化反応におよぼす性ステロイドの影響

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク