婦人科癌におけるT抗原の発現とその臨床的および組織学的意義に関する研究
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概要
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MN血液型抗原の前駆物質とされるThomsen-Friedenreich抗原(T抗原)はヒトに対して免疫原性を持つことが知られているが,通常はその糖鎖末端にシアル酸が結合し隠蔽されている(Cryptic-T抗原 ; C-T).今回我々は各種婦人科腫瘍におけるT抗原の発現とその臨床的,組織学的意義についてレクチン酵素組織化学的に検討し,以下の結果を得た.1. 子宮頚部扁平上皮腫瘍のT抗原の陽性率は上皮内腫瘍(異形成および上皮内癌)で28.6%(8/28)であったのに対し,浸潤癌では52.9%(37/70)と有意に高率であった(p<0.05).また,T抗原系の糖鎖の異常の著しいと考えられるCT(-)例は浸潤癌にのみ認められた.2. 扁平上皮浸潤癌を組織別に検討した結果,T抗原陽性率は分化型である角化癌で60%(3/5),中間型の大細胞非角化癌で57.8%(26/45),最も未分化な小細胞非角化癌で27.3%(3/11)であった.これに対しC-T(-)例はそれぞれ0%(0/5),8.9%(4/45),36.4%(4/11)であり,未分化な癌組織ほど糖鎖構造の変異が大きいと考えられた.3. 子宮頚部扁平上皮癌Ib,II期の症例で,骨盤リンパ節および夢組織への進展の有無とT抗原の発現との間には関連が認められなかった.しかし進展群では非進展群に比しC-T(+)例が多い傾向が認められた.4. 子宮頚部腺癌,子宮内膜癌および卵巣癌等腺癌のT抗原陽性率は,それぞれ62.5%(5/8),91.7%(11/12),80%(8/10)であり,子宮頚部扁平上皮癌の陽性率52.5%(32/61)より高率であった.またこれらの癌にはC-T(-)例は認められなかった.5.子宮内膜癌のT抗原の発現とホルモンレセプターの有無との関連は認められなかった.以上の成績より,婦人科悪性腫瘍においてT抗原が高率に発現していることが示された.また同時に検討したC-T抗原の存在の有無より,子宮頚部扁平上皮癌では未分化な癌組織ほど糖鎖構造の変異が大きいことが示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1987-11-01
著者
-
青野 敏博
徳島大学医学部産科婦人科
-
漆川 敬治
徳島大学医学部産科婦人科
-
漆川 敬治
徳島大
-
苛原 稔
徳島大学医学部
-
安井 敏之
徳島大学医学部産婦人科
-
古本 博孝
徳島大
-
鎌田 正晴
徳島大学医学部産科婦人科
-
大頭 敏文
健康保険鳴門病院
-
坂本 康紀
徳島大
-
森 一正
徳島大
-
坂本 康紀
徳島大学医学部産科婦人科学教室
-
古本 博孝
徳島大学医学部産科婦人科学教室
-
森 一正
徳島大学医学部産科婦人科学教室
-
大頭 敏文
徳島大学医学部産科婦人科学教室
-
岸 恭也
徳島大学医学部産科婦人科学教室
-
鎌田 正晴
徳島大学医学部産婦人科
-
坂本 康紀
徳島大学 産婦人科
-
岸 恭也
徳島逓信病院産婦人科
-
古本 博孝
徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部発達予防医歯学部門発生発達医学講座産科婦人科学分野
-
岸 恭也
徳島大
-
岸 恭也
徳島大学医学部産婦人科
-
古本 博孝
徳島大学医学部
-
青野 敏博
徳島大学医学部
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