末梢血内免疫担当細胞の動態よりみた子宮頚癌症例のリンパ節転移の予知に関する研究

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生体内における発癌とその増殖進展は, 癌細胞の生物学的特性によるものと理解されているが, 一方宿主側よりみるとその個体が癌細胞の増殖進展を許容する"免疫監視機構の撹乱"状態にあるとの解釈も成り立つ. そしてまた最近の研究から生体防禦機構の主役として, リンパ球がその役割を演ずるものとの認識が亢まってきている. 著者らは既に子宮頚癌患者において, 臨床進行期別に末梢リンパ球の動態を検討し, ことに高比重小リンパ球(HSL)において一定の関連をもつ変動を認め報告してきたが, 今回さらに術前における子宮頚癌症例のリンパ節転移の有無を予知すべく, 以下の検討をおこなった. 対象は広範性子宮全剔除術を施行したI・II期頚癌15例で, 著者らの創案せる粘着法と分画遠心分離法の併用による簡易分画化法を用い, 以下のごとき結果を得た. (1) 末梢血内総リンパ球数は非転移例で2,580±3171mm^3で, 対照群の1,800〜3,300/mm^3の範囲内にあるが, 転移例では1,653±4767mm^3と有意なる低下を認めた. (2) 細胞比重差を応用する簡易分画化法による高比重分画中の小リンパ球構成率は, 非転移例で60±12%, 転移例で52±23%と両者は明確に区分されないが, 複数のリンパ節転移を認めた症例では, その百分率に有意の低下を認めた. (3) 高比重分画中のPHAによる blastoid cell 出現率は, 非転移例で61±13%であるのに対し, 転移例では37±16%と明らかな低下が認められた. 以上の成績より(1)末梢血内総リンパ球数2,000/mm^3以下, また, (2)高比重分画の blastoid cell 出現率が50%以下の症例では, 可成りの信頼性をもってリンパ節転移が存在すると診断し得, 術前におけるリンパ節転移の予知の可能性が生じたものと考える.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1974-04-01

末梢血内免疫担当細胞の動態よりみた子宮頚癌症例のリンパ節転移の予知に関する研究

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