子宮頚部異形成および癌性上皮におけるヒトパピローマウイルス(HPV)抗原ならびにDNAの検出
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概要
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子宮頚部異形成, 上皮内癌および浸潤(扁平上皮)癌と, ヒトパピローマウイルス(HPV)との関わりを検索するため, パラフィン包埋保存標本より切片を作成し, 組織形態学的, 免疫組織化学的, ならびに, in situ DNA hybridization法により検討を加えた. その結果, 1) koilocytosisとdyskeratosisとを主徴(コンジローマ様変化)とする形態学的な検索を行うと, 異形成280例中54%, 上皮内癌215例中25%, 浸潤癌564例中25%に陽性所見が認められ, HPVの感染を示唆する結果が得られた. また上皮内癌や浸潤癌の手術摘出標本を対象として検討したところ, これらの病巣周囲の非癌上皮内にも(病巣内陽性所見の有無とは無関係に)コンジローマ様変化が観察された. 2) 免疫組織化学的にHPV抗原の検出を試みた結果, 形態学的にコンジローマ様変化を有する異形成の56%, 上皮内癌の42%, 浸潤癌の35%に陽性所見を得た. HPV抗原はkoilocyteやdyskeratocyteに存在し, このような形態を示さない細胞上に観察することはほとんどなかつた. HPV抗原の検出率が病変の悪性度の進行とともに低下傾向を示したことは, viromaturationが不完全な場合にも, これらの形態学的な変化が生じてくる可能性があることを示唆している. 3) HPV-6, 11, 16, 18型DNA probeを用いて, 組織切片上でHPV-DNAの検出を行うと, 異形成では4型すべてが検出された. しかし, 上皮内癌や浸潤癌では16型が特微的に検出され, また, その癌の角化という形質発現に関わりを有する可能性が高いと推測された. 4) 上皮内癌や浸潤癌でHPV抗原が検出されたのは6型, 11型DNAの検出例に多く, これらにおいては異形成におけると同様にHPV capsidが形成されていると考えられた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1989-09-01
著者
-
中村 哲生
大阪市立住吉市民病院
-
川村 直樹
大阪市立大学 医学研究科 生殖発生発育病態
-
土田 茂
大阪石切生喜病院
-
須川 佶
大阪市立大学医学部産科婦人科学教室
-
山片 重房
大阪市立大学医学部産科婦人科学教室
-
山本 久美夫
大阪市立大学 産婦人科
-
山片 重房
石切生喜病院 婦人科
-
山片 重房
大阪市立大学
-
山片 重房
大阪市立大学医学研究科産婦人科学
-
土田 茂
大阪市立大学医学部
-
須川 佶
大阪市立大学
-
須川 佶
大阪市立大学産科婦人科学教室
-
中村 哲生
大阪市立大
-
植木 佐智子
大阪市立大学医学部産科婦人科学教室
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