上皮性卵巣腫瘍のエストロゲン産生能に関する研究 : 閉経婦人における臨床内分泌学的検討
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概要
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上皮性卵巣腫瘍を有する閉経婦人における内分泌環境を検索する目的をもつて, 原発上皮性卵巣腫瘍患者54例と, 転移性卵巣癌患者4例の計58症例を対象として検討を加え, 以下のごとき結果を得た. 1) 卵巣腫瘍を有する閉経婦人の78%において, 末梢血中E_1値が50pg/ml以上を, E_2値が30pg/ml以上を示し, 対照に比し明らかに高値を呈した. これに伴つて通常, 閉経後にみられる高ゴナドトロピン血症が認められないことも確認された. 2) 高エストロゲン血症の発症頻度は, 組織型では漿液性腫瘍よりもムチン性腫瘍に高く, 腫瘍性格としては, 良性よりも悪性腫瘍に高い傾向が認められた. 3) 患側卵巣静脈血と末梢血とのエストロゲン値の比較, および手術前後における末梢血中エストロゲン値の比較を行い, エストロゲンの産生部位は腫瘍化卵巣内に存在することが推察された. 4) 卵巣腫瘍の完全摘除例では血中エストロゲン値が正常域に低下したが, 不完全手術例では低下が正常限界に到達しなかつた. また再発症例では血中エストロゲンの再上昇が認められた. この成績は,血中エストロゲンを閉経婦人の上皮性卵巣腫瘍に関する腫瘍マーカーとして利用し得ることを示している. 5) 産生されたエストロゲンは, 標的臓器である子宮・膣に作用してホルモン効果を発現する. 子宮内膜にはしばしば増殖性変化がみられ, また異常増殖が促進される可能性があり, 卵巣腫瘍患者に対する内膜精査は必須の事項と考える. また閉経婦人の膣・子宮頚部細胞診において, 年齢に不相応な扁平上皮細胞の成熟がみられる場合には, 卵巣腫瘍が存在する可能性を疑つて精査すべきであると考えられた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1989-11-01
著者
-
川村 直樹
大阪市立大学 医学研究科 生殖発生発育病態
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土田 茂
大阪石切生喜病院
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松本 義隆
大阪市立大学医学部産科婦人科学教室
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山片 重房
大阪市立大学医学部産科婦人科学教室
-
須川 倍
大阪市立大学医学部産科婦人科学教室
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山本 久美夫
大阪市立大学 産婦人科
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山本 啓司
石切生喜病院婦人科
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山片 重房
石切生喜病院 婦人科
-
山片 重房
大阪市立大学
-
土田 茂
大阪市立大学医学部
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山本 啓司
大阪市立大学医学部産科婦人科学教室
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松本 義隆
大阪市大産婦人科
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植木 佐智子
大阪市立大学医学部産科婦人科学教室
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