卵巣癌の診断に対する細胞性免疫学的アプローチ : 癌塊周辺と末梢における非特異的免疫抑制因子の濃度勾配の対比
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概要
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近年,卵巣癌の発生頻度が高まる傾向にあると感ずるが,それにつけても卵巣癌の早期診断法の確立が強く要求される時代となつてきた.我々は,すでに子宮頚癌患者の血清中に存在する非特異的免疫抑制因子が,癌塊の増大とともに増強し,また癌塊摘出によりこれが減弱・消失することを報告してきた.この知見をもとに,今回は卵巣癌を対象とし,その個体の血清中免疫抑制因子の存在の有無,更に,その腫瘍塊帝局所と末梢における抑制因子の濃度勾配についての検討をおこない,これが卵巣癌の早期診断への免疫学的アプローチの一助とせんことを目的として本研究をおこなつた. 尚,術前の旁局所血清は浜田ら(1975)の方法により採取した. 1. dysgerminomaを含めた4例の卵巣癌患者において,その末梢血清中にPHA刺激に対する健常人リンパ球DNA合成能を抑制する所謂免疫抑制因子の存在が示唆された.しかし,良性腫瘍のmucinous cystadenoma症例においては,その存在は認められなかつた. 2. 卵巣癌全例において,末梢血清,癌塊旁局所血清,tumor extractの順にリンパ球DNA合成能に対する抑制効果が増大し,免疫抑制効果のlocal-peripheral gradientの形成が認められた. 3. granulosa cell carcinoma症例においても,術前にretrograde ovarian venography施行時に採取した癌塊旁局所血清と末梢血清にも血清効果のlocal-peripheral gradientの形成が確認された. 以上の成績より,卵巣癌患者末梢血清中に存在する免疫抑制因子の産生母地は癌塊そのものであることが強く示唆された.更に,retrograde ovarian venographyの適用により血清効果のlocal-peripheral gradientの検索をおこなうことから,卵巣癌の術前診断が適確におこないうることが可能となつた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1977-01-01
著者
-
迫 久男
大阪市立住吉市民病院
-
梅咲 直彦
大阪市立大学医学部産科婦人科学教室
-
須川 佶
大阪市立大学医学部産科婦人科学教室
-
迫 久男
大阪市立大学 産婦人科
-
植田 勝間
大阪市立大学医学部産婦人科学教室
-
須川 佶
大阪市立大学
-
中森 宏
大阪・和泉市立病院
-
中森 宏
大阪市立大学医学部産科婦人科学教室
-
林 元一
大阪市立大
-
植田 勝間
大阪市立大
-
迫 久男
大阪市立住吉市民病院産婦人科
-
梅咲 直彦
大阪市立大学
-
林 元一
大阪市立大学医学部産科婦人科学教室
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