Leucocyte Adherence Inhibition testを用いた卵巣癌の免疫学的診断に関する研究

概要

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〔目的〕本研究は,卵巣の悪性腫瘍を対象として、特異的細胞性免疫学的手法を用いた新しい診断法の開発を試み,早期診断への手掛りを追求したものである. 〔方法〕免疫学的検討法は,Macrophage migration inhibition testの変法とも考えられるLeucocyte Adherence Inhibition (LAI) testを採用した.なお対象は上皮性の卵巣癌(cystadenocarcinoma)の11症例である. 〔成績〕1. 分離白血球をindicator cellsとするone-step LAI test:(1) 腺癌組織のtumor antigenとautochthonous leucocyteの組合せにおける白血球付着率は,tumor antigenを欠く系におけるそれの約50%に減少した.この結果はautochthonousの系のみならず,同じ組織型を有する他の卵巣癌患者のleucocyteを用いた系においても同様に認められた.(2) 一方,卵巣の腺癌と組織型を異にする子宮頚癌(epidermoid type)あるいは良性卵巣腫瘍患者の白血球を用いたときは,白血球付着能の障碍はほとんど認められなかつた.(3) 以上の基礎実験をもとに,24の組合せにおける成績を小括すると,腺癌患者の白血球を用いたときRatio of Adherenceは62.0±9.6であり,対照のそれは83.7±9,8となり,両群間に有意差が認められた.しかしながら,個々の症例を眺めてみると,両群の間に可成りのoverlap症例が存在することが判明した. 2. Peritoneal cellsをindicator cellsとするtwo-step LAI test: One-step LAI testの改良を目的として,chemical mediator産生細胞の分離を省略し全血中のそれを用い,またindicator cellsをモルモット腹腔細胞とした"全血LAI test"を設定したとき分離LAI testに比し,診断の正確度をさらに昂めることかできた. 〔結論〕以上の検討より,卵巣の腺癌症例のtumor antigenをaliquotsとして凍結保存し,各症例の白血球(分離あるいは全血中の白血球)との反応をみることから卵巣癌の臨床診断が可能であることが判明した.なお,今回の研究対象となつた症例は腫瘍塊が手拳大以上となつたものであつたが,今後本法が応用可能なる癌塊の最小の大きさを求めること,およびPeritoneal cellsの保存法などの検討をまつて,その臨床的意義がさらに昂まるものと考えられる.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1977-12-01

Leucocyte Adherence Inhibition testを用いた卵巣癌の免疫学的診断に関する研究

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