Dextran Sulfare投与による癌患者の細胞性免疫予備能測定とその臨床的意義に関する研究

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近年リンパ球(リ球)を中心とする細胞性免疫学的検討法の画期的な進歩により,癌の増殖は,癌細胞のmalignant potentialityと宿主側のdefense potentialityの相関により支配されているとの認識が一般化しつつある現況となつてきた.我々は癌進展に伴う宿主のリ球の数的・機能的変遷につき報告を重ねてきたが,今回は末梢リンパ組織中に末梢血中の約30倍ものリ球が存在するという報告を参考として,heparinoidの一種であるDextran Sulfate (D.S.)製剤を投与し,それにより末梢血内へ動員されるリ球の数的・機能的増加量,すなわち細胞性免疫予備能の測定を行つた.そして更にこの予備能が癌進展とともにいかに変貌を来たすかを検討した. 〔I〕細胞性免疫予備能測定法 (1) D.S.のmitogenic activity,(2) D.S.の投与量,(3) D.S.投与後における末梢血内リ球DNA合成能の時間的推移などの詳細なる予備実験の後に確立された方法は次のごとくである.D.S. 300mg投与前および静注後2時間に採血し,PHA添加微量全血培養法にて単位血液量当りの免疫能を測定し,その増加量をもつて細胞性免疫予備能とした.尚D.S.により末梢血中へ動員されるリ球は組織学的およびリ球subpopulationの検討より,主としてT-cellであることが確認された. 〔II〕癌進展に伴う細胞性免疫予備能の変遷・推移頚癌進展に伴う細胞性免疫予備能を検討した結果,対照群24,300±10,500 (M.+S.D.)cpm,初期癌群18,700±7,500cpm,進行期癌群14,100±7,600cpm,末期癌群9,500±3,000cpmであり,担癌個体の細胞性免疫予備能は癌進展とともに低下傾向を示した. 以上,末梢リンパ組織内のリ球の潜在的免疫能,すなわち細胞性免疫予備能力の測定法としてのstandardized methodを作製し,本法により癌進展に伴う宿主の細胞性免疫予備能の枯渇状態を明らかとした.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1976-03-01

Dextran Sulfare投与による癌患者の細胞性免疫予備能測定とその臨床的意義に関する研究

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