土壌の酸化還元電位と鉄・マンガン溶出に及ぼす海水の影響(生産環境学科)

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海水の影響を受けるマングローブ生育地の土壌においては,淡水により湛水される場合とは異なる化学的現象を呈することが予想されるので,マングローブ土壌の理化学性研究に資するため,酸性の赤色土と石灰質アルカリ性の灰色台地土を,蒸留水,50%及び100%海水で湛水し,その時のEh及びpHの変化並びにEhやpHに影響される鉄,マンガンの溶出について調べた。先ず赤色土については海水湛水によりpH低下が予想されたので,蒸留水,50%海水,100%海水で炭カル添加による緩衝曲線を得た。50%及び100%海水を用いると,中和緩衝曲線は1規定塩化カリ液を用いた緩衝曲線に近くなることが認められた。この緩衝曲線から求められる炭カル量を赤色土に加え,予めpH4.5,5.5になるように調整してから,海水湛水実験を行った。赤色土を蒸留水で湛水すると,土壌pH調整の有無に関係なくEhは速やかに低下し,それにともなってpHは徐々に上昇する傾向を示した。しかし海水で湛水すると,pH調整をしなかった土壌ではEh低下が遅れ,pHは低めに推移した。鉄とマンガンは蒸留水で湛水するより海水で湛水する方が溶出量は多くなった。これは海水が土壌pHを低めに保つ効果によると考えられた。灰色台地土においては,蒸留水で湛水すると,この土壌が石灰質アルカリ性であり,また有機物が少ないこともあってEhは0mV以下には下がらず,pHは8.5から7.5程度に低下する傾向がみられた。鉄は蒸留水,海水いずれによる湛水でも溶出はみられなかった。マンガンは蒸留水湛水では溶出がなかったものの,海水による湛水ではマンガンがかなり溶出する特徴が認められた。以上より海水の影響を受ける土壌では,湛水時のEhとpHの変化,並びに鉄やマンガンの溶出が,淡水のみの場合とはかなり異なる傾向にあると推定された。
1991-12-04

土壌の酸化還元電位と鉄・マンガン溶出に及ぼす海水の影響(生産環境学科)

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