米国ミシガン州の四土壌のカリ有効度に関する研究(農芸化学科)
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概要
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米国ミシガン州の四つの土壌-Brookston loam, Genesee loam, Kalamazoo sandy loam, Landes-Abscota sandy loam-を用い, 作物栽培下においてこれらの土壌が示すカリ供給力あるいは固定力を比較し, またこれら供試土壌のカリ供給・固定力と関係のある物理・化学・鉱物学的性質を調べる目的で研究を行なった。先ず各土壌に5段階のカリ分(エーカー当り0,200,400,800,1,600ポンド)を施用し, 後にカリの施用を行うことなく作物を6回(小麦2回, ソルガム2回, トマト1回の順で)ポットに栽培した。そして施用カリに対する作物の応答, 作物のカリ・カルシゥム・マグネシゥム吸収, 各土壌のカリ供給力などを調べた。結果は次の通りであった。(1)Brookston loamにおいては第3作の小麦と第6作のトマトのみが施用カリに対して収量の応答を示し, Genesee loamでは第3作以後の作物総てが施用カリに対して応答した。Kalamazoo sandy loamではGenesee loamにおけると同様な結果が得られたが, 第2作の小麦は施用カリに対してむしろ負の応答を示した。Landes-Abscota sandy loamでは第2作以外は総て施用カリに対し応答した。(2)作物のカリ含量(%)は施用カリ量が増加するに従って増大したが, カルシゥムとマグネシゥムの含量(%)は逆に減少した。一方作物の栽培回数が進むと作物のカリ含量(%)は低下し, 逆にカルシゥムおよびマグネシゥムの含量が増加する傾向を示した。(3)作物のカリ吸収量におよぼすカリ施用の効果は有為的であったが, カルシゥムおよびマグネシゥム吸収量におよぼす効果については作物間および土壌間で相違がみられた。(4)作物収量は一般に作物のカリ吸収量, およびカリ+カルシウム+マグネシゥム吸収量と正の相関を示した。第6作以外は多くの場合収量とカルシゥム吸収量およびマグネシゥム吸収量との間に負の相関を示した。第6作(トマト)では殆んどの場合に, 収量とカリ吸収量・カルシゥム吸収量・マグネシゥム吸収量・カリ+カルシゥム+マグネシゥム吸収量などとの間に正の相関がみられた。(5)無カリ区における作物のカリ吸収量を土壌のカリ供給力とみなした場合, 供試土壌のカリ供給力はBrookston loam>Kalamazoo sandy loam>Landes-Abscota sandy loam>Genesee loamの順であった。小麦(第2作)の茎組織をX・線マイクロアナライザーを使用して調べたところ次の様な結果が得られた。(1)エーカー当たり400ポンドのカリを施用したBrookston loamに栽培した小麦の茎にはカリの濃度が高く, カルシゥムおよびマグネシゥムの濃度は低い。(2)Genesee loamの無カリ区に栽培した小麦の茎にはカルシゥムおよびマグネシゥムの濃度が高く, カリの濃度は低い。供試土壌の化学的性質について, 置換性および非置換性カリ・湿潤一乾燥反復処理によるカリの放出と固定・凍結一融解反復処理によるカリの放出と固定・カリのquantitity-intensity関係などを調べた。結果は次の通りであった。(1)置換性カリは第5作後には著しく減少していた。(2)非置換性カリはBrookston loam, Genesee loam, Landes-Abscota sandy loamなどの三土壌においてはエーカー当り400ポンド以上のカリを施用した場合, またKalamazoo sandy loamでは1,600ポンドのカリを施用した場合は何れも第5作後においても初期の含量よりも高い値を示した。(3)施用されたカリは最初は非置換態に変わり, その後作物が置換態のカリを消費するに従って徐々に放出されるものと思われた。カリを置換態にして放出する速度は, 供試土壌の中でカリ固定力・陽イオン置換容量などが小さいKalamazoo sandy loamにおいて最も早いと思われた。(4)供試土壌にカリを施用して, 作物を栽培せずに13ヵ月間インキュベートした場合, Kalamazoo Sandy loam以外の土壌では置換性および非置換性カリの含量が増加した。Kalamazoo sandy loamでは施用カリ量がエーカー当り400ポンド以上になると非置換性カリが減少した。インキュベーションによる置換性および非置換性カリの増加の程度は, 初期のカリ含量が低い程, またカリ固定粘土の含量が多い程大であった。(5)土壌の湿潤一乾燥処理を反復した結果, 供試土壌総てにカリ固定の現象がみられた。この場合にみられたカリ固定の程度はBrookston loam>Landes-Abscota sandy loam>Genesee loam>Kalamazoo sandy loamの順であった。(6)供試土壌を反復して凍結一融解処理した場合, Kalamazoo sandy loamとLandes-Abscota sandy loamは少量のカリを放出した。一方Brookston loamとGenesee loamは少量のカリを固定した。(7)土壌カリを-△K^0とAK^k_eで表示する時, 両者とも作物の栽培が進むにつれて減少したが, 施用カリ量の増加に伴って栽培区(ポット)・インキュベイション区(ポット)の両方において増大した。PBC^kは栽培区ではカリの施用量が増加するに従って減少し, インキュベイション区では土壌間でPBC^kの増減に相違がみられた。
- 琉球大学の論文
- 1972-12-01
著者
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