身体の力学的特性による歩行時の脚間接間シナジー
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概要
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ヒトの歩行における脚関節軌道は1歩毎に若干異なるが,転倒の防止に重要な時期では,関節間シナジーを働かせて足先位置のばらつきを抑えていることが近年の研究により示唆されている.では,このような関節間シナジーは中枢神経系と身体の力学的特性のどちらによって生じているのだろうか.本研究ではこの点を明らかにするため,受動歩行機における脚関節間シナジーを解析し,ヒトの場合と比較を行った.その結果,両者において,踝が地面から離れて持ち上がる時期や,遊脚中に足関節が膝関節の真下を通る時期に,足関節の水平位置や高さを調節する関節間シナジーが観察された.したがって,ヒトの歩行におけるこの時期の関節間シナジーは,身体の力学的特性による可能性が高い.これらの関節間シナジーは,重心の水平位置の揺動を抑えたり,足先の地面との接触によるつまずきを避けることに寄与していると考えられる.一方,立脚期後期にはヒトにのみ足関節の高さを調節する関節間シナジーが観察された.これは体勢の調節や転倒を防止するために,中枢神経の制御によって生じたシナジーである可能性が高い.以上の結果は,ヒトは身体の力学的特性から生まれる関節間シナジーを活用しながら,中枢神経系の制御を加えることで歩行の安定化を図っていることを示唆している.
- 2012-07-23
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