多発性骨髄腫の治療抵抗性獲得において接着分子が果たす役割
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概要
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多発性骨髄腫は造血組織のなかでも形質細胞を起源とする腫瘍であり、貧血や溶骨病変の出現など多彩な症状を呈する。自家造血幹細胞移植の導入や新規治療薬の出現で治療反応性が改善しているが、依然多くの治療抵抗症例や治療に反応しても再発する症例が存在する難治性疾患である。この治療抵抗性の獲得に、骨髄腫細胞に発現する接着分子が重要な役割を果たすことが示唆されている。cell adhesion-mediated drug resistance (CAM-DR)の獲得においては、接着分子と骨髄微小環境の血管内皮細胞などの間質細胞に発現するリガンドの結合によって誘導される骨髄腫細胞の増殖・抗アポトーシスシグナルの活性化が抗がん剤耐性を誘導すると考えられる。具体的には、インテグリンなどのインテグリンが骨髄腫細胞の骨髄内の血管内皮細胞への接着性を介して治療抵抗性の獲得に重要な役割を果たしている。一方、P-セレクチンは骨髄の血管内皮細胞に発現して骨髄腫細胞に発現するPSGL-1との相互作用を介して骨髄微小環境における骨髄腫細胞の動態を変化させ、治療抵抗性の獲得をもたらすと考えられる。そのほか、N-カドヘリンは骨髄腫細胞と骨芽細胞の相互作用を介して溶骨病変の形成を促進するなど、接着分子は多発性骨髄腫で臨床上問題となる骨病変の合併にも深く関与する。また、貧血などの原因となる造血障害においてもCD44などの接着分子の低下により骨髄微小環境が変化することが誘因のひとつとなっている。このように、多発性骨髄腫の病態に様々な面で接着分子は関与しており、今後、治療においても重要な治療標的のひとつとなると考えられる。インテグリンの活性化調節には細胞内ドメインの相互作用を介した高次構造の変化が重要な役割を果たすことが明らかになった。多発性骨髄腫の治療において、この細胞内ドメインの相互作用を標的とする新しい治療法の開発も期待される。
- 2013-03-31
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