がんの最新治療 各論(5)多発性骨髄腫
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概要
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形質細胞由来の造血器腫瘍である多発性骨髄腫は血清・尿中の単クローン性免疫グロブリンの産生を特徴とする。貧血などの造血障害、溶骨病変、腎機能障害、易感染性などの様々な臨床症状を伴いADLの低下を伴う場合がみられる難治・再発性の悪性腫瘍である。治療としては従来の化学療法であるMP (メルファラン・プレドニン)療法では完全寛解を得られることは困難で十分な生存期間を得られなかった。近年になって大量化学療法を伴う自家造血幹細胞移植療法が導入され治療の反応率の改善と生存期間の延長が得られるようになった。しかしながら、大量化学療法の施行対象は65歳以下・重篤な合併症なし・心肺機能正常の患者に限定されており、大量化学療法の非適応となる高齢者や重篤な合併症を有する患者に対する新たな治療法が必要とされていた。現在では、従来の化学療法とは異なる作用機序の新規治療薬が開発され、大量化学療法の非適応患者のみならず、大量化学療法適応患者の治療戦略にも組み込まれ、治療反応率の改善と生存期間の延長に寄与している。新規治療法としては、サイトカインや血管新生の抑制などの作用機序を持つサリドマイド、およびその誘導体であるレナリドミドなどの免疫調節薬(IMiDs: immunomodulatory drug)とプロテアソーム阻害薬であるボルテゾミブが現在使用されている。これらの新規治療薬と従来の化学療法薬を組み合わせた治療が標準的な寛解導入療法として行われている。さらに、新規治療薬を中心とした、地固め・維持療法が臨床試験として検討され治療の反応率の改善および生存期間の延長の実現が試みられている。そのほか、新規プロテアソーム阻害薬、サリドマイド誘導体、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害薬、モノクローナル抗体、HSP阻害薬、Akt阻害薬などの開発中の薬剤が多数あり、さらなる治療法の進歩が期待される。
- 2013-06-25
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