新川・春日川河口干潟域(瀬戸内海備讃瀬戸)におけるリンの収支

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高松市新川・春日川河口干潟を調査対集とし,河川から負荷されたリンが干潟域を通過する過程でどのような質的・量的変化を受けて海域へ流出するのか,その収支を定量的に明らかにする目的で春期から秋期にかけて観測を行った.その結果,年間を通じた河川から干潟域への負荷量と干潟域から海域への流出量は類似した値となったが,河川から負荷されるリンの形態は懸濁態とリン酸塩でほぼ等量であったのに対し,海域へ流出するリンの大部分はリン酸塩であり,干潟域が「無機化の場」として機能していることが示された.また,春期には河川から負荷されたリンの50%以上,夏期には河川から負荷されたリンのほぼ全てが干潟域に保持されると見積もられた.一方で秋期には春・夏期に卓越していた捕捉作用は認められず,干潟域に保持されていたリンが流出していると考えられた.春・夏期にリンが保持される要因として,リンを含んだ懸濁粒子が感潮域において物理的な沈降・堆積作用を受けること,また,一次生産者によるリン酸塩の同化・粒子化と,それに続く二枚貝等の摂食活動による懸濁粒子の捕捉効果が主であると考えられた.以上より,河川からのリンの負荷と海域への流出は同調せず,河口干潟は河川を通じた海域へのリン負荷に対して時間的なずれを生じさせていることが明らかとなった.
2011-02-28

新川・春日川河口干潟域(瀬戸内海備讃瀬戸)におけるリンの収支

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